託された力が運命を手繰り寄せる。星が見えない夜でも、歩みは止めずに。

皇帝が崩御した皇雅国。後継の息子たちは敵対し、さらには国を護る国宝・青剣も姿を消した。守護を失った国にはあやかしが這い出し、沙夜が暮らしていた村も犠牲になってしまう。「皇都へ行け」という手紙を頼りに、愛犬の玖狼と共に後宮の門を叩いた。何もかも失ってしまった沙夜がそこで出会ったのは、国を護るべく奮闘する皇兄殿下の魅侶玖。これは二人の邂逅が国に平和を取り戻す物語――。


何もかも失ってしまった沙夜が後宮でひたむきに生きていく姿は、自然と応援したくなります。政を裏で支えるもののけたちや、陰謀渦巻く王位継承争い、そして欲に塗れた後宮。その中に放り込まれても自分を見失わず立ち向かえる沙夜の強さと優しさが眩しい。考え方や価値観が良い意味で等身大で、共感性の高いヒロインだと思います。

作者様にとって初挑戦の和風ファンタジーとのことでしたが、もう、大満足です!言葉一つ取っても優雅ですし、登場するキャラクターたちの雅言葉が板について、世界観にぐぐっと惹き込まれます。
そして読了後、ついつい読み返したくなる。「あれはこういうことだったのか」「あそこのシーンの意味はつまり……」と、たくさん思い起こすことがあります。ストーリーラインで言えば「ヒロインがヒーローと出会って国を救う」お話しですが、そのバックグラウンドには読者の想像を超える思惑が何重にも張り巡らされていて、「あっぱれ」って大の字で天を仰ぎました。構成力に脱帽です。

和風ファンタジーはもちろん、後宮やあやかし、モフモフなど、多くの人が惹かれるワードが盛りだくさんな本作。どれを取っても楽しめること間違いなし!ぜひご一読あれ!

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