南大陸の浪漫

「いやぁやっぱりこの光景はいつ観ても心躍るっすね〜」


今私は空中で闘ってる機体を見ながら言う。


「全くもって同意だね!何十何百、いや何千何万だろうとこの光景を観れるならば飽きる事なんて無いだろうね!」

「わかるぅ」

「巨大ロボット同士の闘いは浪漫だよなぁ」


私の他にも一緒に見ていた同志達から同意の声が続く。


『こんなもんじゃ無いだろう百八式!!!お前なら!俺とお前ならまだイケる!更なる空へ!遥かなる高みへ!行くぞ百八式ぃぃいいいいい!!!』


そんな声が聴こえてきたのと同時に闘ってる一機のロボットが変形した。

背中の部分が展開して翼の形になり、機体から蒼オーラの様なものが出ていた。


『来い!お前の百八式と俺のマチルダ、どちらが強いか今ここで証明しようじゃないか!!!』


闘っていた相手からもそれに応えるように全武装を展開する。

マルチミサイルにレーザーガン2丁と肩にバズーカで先制攻撃をする。


「とうとうクライマックスみたいっす!」

「さてあの弾幕を掻い潜らなければ百八式には勝ち目は薄いぞ。」

「逆にマチルダの方は抜けられた後がキツくなりますね。ゴリゴリの遠距離武装が主なので近接が得意な百八式に比べてスピードも無いですからね。」


突撃している百八式とそれを迎え討とうとしてるマチルダ。マルチミサイルが迫ってる中百八式が展開した翼が急にバラバラになった。


「翼展開しただけで壊れたっすか!?」


私は驚きの声が出た。


「いや違う!前方に飛んでいったぞ!」


その声によく見てみると羽根の部分だけが飛んでいったみたいだった。

そして迫っていたマルチミサイルがその飛んできた羽根に反応し次々と着弾して爆発していった。


「あの翼はただの飾りって訳ではなく、打ち出す事でフレアの役割になってたと言う事なんですね。」


マルチミサイルの弾幕を抜けた百八式がマチルダに迫る。マチルダはレーザーガンやバズーカで迎撃しようとするがスピードが乗った百八式はそれらを避け更に接近する。


『堕ちろぉぉぉおおおおおおお!!!』


マチルダのパイロットが撃つ


『俺と百八式がこの程度で堕ちるかよおおおお!!!』


だが、それも避けられる。


『終わりだぁぁあああああああ!!!』


百八式のブレードがマチルダを捉え切り裂く。


『クソがぁぁぁぁあぁああああああぁ!!!!』


そしてマチルダが爆散して勝負が決まった。


「いやぁまさかあんな隠し玉があったとは、予想外っすね」

「あの変形して翼になるだけでも胸熱なのに、まさかミサイル対策にちゃんとしてたとはね。」

「また良い物が観れたわ」


周りでは私たち以外にも観ていたプレイヤー達がそれぞれ今の闘いの感想を話し合っていた。


「またこれで機体開発が熱くなりそうっすね!」

「それと一緒に兵器開発もね」

「うちも更なる改良しないとですねぇ」


今の闘いを観て私たちの作ってる機体もどう改良しようか。はたまた新しい機体をどう作ろうか。と色々考えてる時メッセージが届いた。

開いてみるとギルドのグループチャットからだった。



—ギルマス—

至急ギルドに帰還してくれ

所長が来た



とても短く簡潔だった。


「急いで帰りましょうか」

「急ぎましょうか」

「急いで帰るっす!浪漫機構のみなさんギルドに帰還するっすよ〜」


だがそのメッセージは私たちにとってはとても大きく何よりも優先する事だった。 

一緒に観ていた同志であり同じギルドに所属しているメンバーを呼んで帰還する。


「到着っす〜」


ギルドのロビーの他の同志と一緒に転移し帰ってきた。


「おう。観戦中に悪かったな」


吹き抜けになっているロビーの上から声がかけられた。


「いえいえ丁度終わった所でしたし問題ありませんよ」

「なら良かったわ。とりあえず上がって来い。所長がコーヒー淹れてくれてるぞ」


ギルマスがそう言って顔を引っ込める。

私たちも階段を登って3階の会議を行っている部屋へ向かう。


「所長今回はどんな物作ったんっすかね?」

「もしかしたら先程見た百八式の翼部分、所長が作ってたりですかね?」

「あり得そうですね」


他の同志達もそれぞれ今回所長がギルドに来た理由を話しながら考える。

私たちが所属しているギルド【浪漫機構】は機体・兵器・武器・防具と色々なものを設計・製造の手伝いをしている。

自分達の機体、兵器は自分達で作っているが設計に関してはとある人に頼んでいる。


「こんにちはっす!」


部屋の扉を開けながら挨拶をする。


「ちわ〜」

「こんにちは」

「お疲れ様です」


他の同志達も挨拶しながら入る。

いつも会議を行ってる部屋はギルドメンバー全員が入れる程広い。

今【浪漫機構)】に所属してる人は15人であるが、その全員が入ってもまだ余裕がある。

部屋の中には大きいテーブルが4つありその一つでコーヒーを淹れてる人物とケーキを準備してたギルマスが居た。


「おう、お疲れ。邪魔してるぞ」


コーヒーを淹れてた機械人形《マシンドール》の人物こそが私たちが所長と呼んでる人で、私たちのギルドが出来たきっかけの人である。


「所長が邪魔な訳ないじゃ無いっすか!」

「いつ来たって大歓迎ですよ」

「所長、さっきやってた【MS再現製造部】の百八式と【これが我らの答え】のマチルダの闘い観ました?」


そう言いながら私たちは席に座る。


「観てないわ。北大陸に妹とお店用にケーキ持っていってたから。それに誰か撮ってるだろ?後で送っといて」


そう言ってコーヒーを配る所長とケーキを置くギルマス。


「それでどうだった?百八式の翼は」

「あれやっぱり所長が作ったんですか?」


やっぱり所長の仕業かぁとみんな思いながら一人が聞く。


「製造には携わって無いが、設計図は渡した。面白い注文だったからな。ちゃんと機能してたか?」


ニヤリと笑いながら所長が言う。


「バッチリでしたっす。さすがっすね、設計図だけでちゃんと作り上げたのわ」


【MS再現製造部】の評価を上げる


「まあアレにも一回しか使えないと言う欠陥があるがな」


所長がコーヒーを配り終えいつもの席に座りながら言う。


「あ、やっぱりですか?」

「でも格好いい変形シーンでしたし、完璧なラストでしたから最終局面のここぞと言う所でアレは良かったですね〜」

「決め切った百八式のパイロットが上手くやってましたね」

「私の機体にも取り付けたいっす」


所長が作る物は大体何かしらの欠陥がある。だがそれを補って余りある性能と浪漫がそこには詰まっている。


「好評のようで作った甲斐があるわ。設計図はタンバに渡してあるから好きにしていいぞ」


タンバとは私たちのギルマスである。

そしてギルマスが私の座ったテーブルにケーキを持ってくる。


「あれ?所長、新作ですか?」

「おう。蜜イモで作ったモンブランだ」


所長がコーヒーを飲んでそう言う。

所長は何か造ってる時に行き詰まったり息抜きに新しいケーキを作り、出来上がったら持って来てくれたりする。


「めっちゃ美味しいっす!」

「あぁいい甘さですね」

「うまっ!?」

「本当に所長って色々出来ますよね」

「この後販売開始ですか?」


他の同志達も様々な感想を言いながらケーキを食べる。


「この後販売だから誰にも言うなよ」


所長がそう言いとりあえず全員コーヒーとケーキを楽しむ。


・・・


そして全員ケーキを食べ終えもう一杯コーヒーを淹れて貰った時にギルマスが話始めた。


「よし、じゃあ会議始めるぞ。今回も同志全員に集まって貰ったのは所長が試作品を造ったからだが、今回は東大陸のものだ。」


ギルマスがそう言うと隣の所長が試作品を取り出す。


「今回作ったのは狙撃銃だがこれは普通の狙撃銃じゃない。特殊な弾にライフリング、そしてとある機構を付け加えたものと付け加えていないパターンの2つだ」


そう言って設計図を拡大したものが空中に映し出される。


「まず今回求めたのは貫通力と射程の増加だが、銃自体を大きくし弾も大きくじゃ面白くも無いし普通だ。だから今回こう言った設計にした」


その二つの銃は全く違う形をしていた。

疑問に思ったがまずは説明を聴く。


「まず弾だが見ての通り螺旋状に加工してありそれに伴いライフリングもこの弾を撃ち出すのに特殊な形にした。片方は従来の様に火薬で撃ち出す。もう片方のはこの箱状の中に弾を入れると、電気で入れた弾が高速回転し、引き金を引く事で弾を打ち出し、このライフリングに沿って飛んでいく感じになっている。まあ使ってみるのが早い。」


一旦おおよその概要が説明された。


「所長!!!」


同志の一人が挙手して所長を呼ぶ。


「どうした?質問か?」

「Re LIVEの犬神ミアちゃんがケーキパーティすると言うのと喫茶マロンの新作の事を投稿してました!」


その声を聞いて所長は天を仰いだ。

そしてUIを開いて操作しだす。


「ありがとう......さて今はそれは置いといてこの試作品についてだが、今回は出来ればスナイパーを使い慣れた人にテスターを頼みたい。それで誰か心当たりがある人に連絡を取ってもらいたいんだが誰かいるか?」


私たちの中にもこのゲームで銃を使ったことはあるが使い慣れてる訳では無い。

しかもスナイパーライフルは難しく東大陸のプレイヤーの中でも使っているのは少数である。


「誰か良い人いるか?」

「確かスナイパーギルド無かったでしたっけ?」

「掲示板で探して見たら何個かあるそうですよ。」

「スナイパー専用スレありますね。そこによると【サジタリウス】と言うギルドのアサギリさんがよく出て来ますね」

「調べてみたら配信もしてるそうですよ」

「私【サジタリウス】にフレンドいるっす!確認してその人だったら連絡してみるっす」


そう言って私はUIを開いてフレンドにメッセージを送る。


「それじゃあテスターへの連絡はアリスにお願いするわ。俺はちょっと出てくるから何かあったら連絡くれ」


そう言って所長はコーヒーを飲み干してから部屋を出ていく。


「じゃあアリスはテスターに連絡と日時を聞いてみてくれ。いつも通り他言無用して貰うように。他のメンバーはもし断られた時の為に他に良い人居るか探しと計測器の準備で」


ギルマスがそれぞれに指示を出し各動く。

フレンドに送ったメッセージは直ぐに返ってきて確認が取れた。

そして【サジタリウス】のギルマスのアサギリさんにメッセージを送る。


「どうだった?」


ギルマスが私の所に来て聞いてくる。


「フレンドに確認取れたのでメッセージ送った所っすね。さっきまで防衛戦やってたみたいっす」


そう言って所長が淹れてくれたコーヒーが入ってるポットの所に行きマグカップに注ぐ。

そして少しした後にメッセージが来た。


「あー、ギルマス。一人観測手の同行者を付けたいと言う要望きたっす。どうしましょう?」


私はそう言いながらギルマスにメッセージを見せる。


「所長に確認取らないとだな。ちょっと待ってろ」


その後所長からOKの返事が来てアサギリさんにもメッセージを送り、この後が楽しみに思いながら準備で色々動くのであった。

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