第9話 姫の帰還

「おひいさま、ああ、やっぱり、私のお姫さまに相違ない!!」

 枕元が騒がしい。むう。

「ああ、もう、うるさい!!」

 がばっと起き上がる。目の前には、白い獣。

「はい…?」

 やけに馴れ馴れしい。

「ずっとお待ちしていました!! お姫さまからの言い付けも守って。女子供には優しくせよと」

 瞬きしたら、頬を涙が伝った。還ってきたのだろう。懐かしい場所に。

「鏡はない?」

「はい、ここに」

 持ち手のついたまるい鏡を覗き込む。いつも通りの茶色の髪に、青い瞳。

「でも、女の子だ…」

 空いた手を頬に当てる。

「当たり前でしょう。お姫さまは、お姫さまなんだから」

「ああ、うーん、えっと…。ちょっと待ってね」

 鏡を置く。袖がひらひらした白い寝間着。

「とりあえず、着替えるか…」

「はい、今、人を呼びますね」

 獣は、颯爽と駆けていった。

 朝日差す部屋にひとり残されたのだった。


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蜜くんはプリンセス 神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ) @kamiwosakamariho

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