第3話

「腰いてぇ!」

汗を額に浮かばせながら俺は叫ぶ。あぁ広い土地だなぁとこんな時にも感じる。腰が痛くてもひとり、なんてな。


耕した畑の1部に絶賛俺は種まきをしていた。

「こんなに丁寧にする必要あるのか、これ!?」

そう、丁寧にゆっくりまいていたせいで、腰が痛くなった。まぁこいつらが上手に育つためか。そう思うと母なる気持ちで頑張れる気がした…

「って腰いてぇ!!」

まだしばらく慣れるのには時間がかかりそうだ―







「ふぅ、この家も少しは綺麗になったな。」

そう、俺はこの埃っぽかった家を綺麗にし、何とか住めるように整えていた。

「かと言ってベッドは固いし、新調の必要ありかな。」

なんやかんや楽しい。こうやって状態の良くないものを綺麗にするのは気持ち良いものだ。いつかこの家を建て替えてしまいそうな勢いだがそれもまたいいなと思う。お金が集まったらぜひしてみたい。


『ぐぅぅぅ』

そんな事を思っているとお腹が鳴った。畑仕事の後は、腹が減って仕方がない。そろそろ夕飯にするかと思い、俺は食材を取り出す。今日はキャベツのクリーム煮にしよう。そう思っていると近くの山で美味しい山菜が採れることを思い出した。

せっかくだし採りに行こうと出かける準備をする。この辺の土地の森で見られるモンスターはスライムが大半、ごく稀にゴブリンが見られるようだが、冒険者ではなくても戦い方さえ知っていれば勝てるような相手だ。俺は今まで共に鍛錬を積んできた刀を腰に携え、バッグを持って出かける。


幸いに外はまだ明るい。でも暗くなるといけないと思い先を急ぐ。




「これか!」

美味しいと聞いていた山菜を見つけ声が出る。クリーム煮に入れると美味しいんだろうなぁ。今からヨダレが垂れる。こうしちゃいられない。早く家に帰ろうと帰路に着こうとした時、

「…っっ!」

息を飲むような光景を見た。オーガがいたのだ。それも大きな。もちろんここは森であり、モンスターが現れる可能性もあったわけだが、大きなオーガの出現に驚く。

なぜこんな所にいるのだろう、まさか街を襲いに行くのか、疑問は絶えない。

とにかくこれは報告する必要があるだろう。俺は近くの街に向けて急ごうと思った矢先、オーガがこっちを見ていたのに気が付いた。


『『『ぐぉおおおおおおお!!!』』』

森に響くうるさすぎる叫び。交戦しなければいけないのか、農業適性の俺に出来るのか。不安が募るがやるしかない。俺は腰の刀に手を添え、鞘から抜き、構える。


間合いはそれほどない。オーガはこちらに向かってきている。俺はオーガに向かって走り出す。

やつの弱点は心臓。そこを狙って1突きだ。だがその前に足元を崩さねばならない。心の中で思い描くが、出来るかは分からない。そもそもこんなところで1人オーガと出会った時点で生き残れるかは分からないのだ。


オーガは様子見のつもりか縦殴りの攻撃を仕掛けてきた。それならば避けるのは簡単だ。俺は素早く横に避け足元に回り込む。そして思い切り足の健を叩いた。

「…っ!硬い!」

刃が通らない。これじゃ体制を崩すことすら出来ない。冒険者は身体強化をして戦うのだ。そんなもの俺は使えない。


オーガは俺の実力を分かったのか笑っているような気がする。

もうダメかと思った刹那

オーガの首が飛んでいた。



「大丈夫ですか?」

オーガの首を飛ばした冒険者が声をかけてきた。オーガの首を飛ばして倒すなんて恐らく上級冒険者だろう。積まれた研鑽と惚れ惚れするような剣技、どんな方なんだろうと顔を見る。




息を忘れるような美貌。この冒険者は可憐な女性冒険者だったようだ。


「大丈夫です。助けていただき、ありがとうございました。」

その言葉に安心したように笑い

「それは良かったです!名乗るのが遅れました私は冒険者のミアです!」

と名乗る。ミアさんというのか、綺麗な方だなと思う。思わず名乗るのを忘れ見惚れてしまう。

鍛え抜かれた身体、されど女性らしい体つきで思わず見つめそうになってしまう。

いけない、俺も名乗るのが礼儀だろう。

「ここら辺で農家をやっているヴァルです。ほんとにありがとうございました。」


「こちらこそ助けることが出来て良かったです。でもここら辺でオーガが出るなんてどうしたんでしょうか。一応のため、あなたを安全なところまでお送りしますよ。」




オーガ出現についてはミアさんが報告してくれるそうだ。俺はミアさんに感謝を伝え別れた。


ちなみに山菜を入れたクリーム煮はとても美味しかった。














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畑農家から始まる無双生活! はたなかまや @hatanakarnaya

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