ねがい、かなう。


よき家にうまれ、ゆたかな才能をもち、将来を嘱望され。
とんとんと、輝く階段をのぼってゆき。
そのさきにあった、王妃の座。
でも。

ヴェルラクシェは、ことほぎの子。
大きいが故に、ふつうの方法では接することができないほどのちからを持って。方法は、彼女にも、名家であるおうちのだれにも、わからなかった。みつけることが、できなかった。だから、道は、遠ざかった。

だれも、彼女の能力を、信じなかった。

ただひとり。
詐欺師とよばれる、ひとりのおとこを除いては。

ヴェルラクシェの願いは、ひとびとに日々のあたたかさをもたらすこと。
ヴェルラクシェの願いは、世界に、わたしがいたんだという軌跡を残すこと。
ヴェルラクシェの願いは、彼、に。

信じてくれた、たったひとりのおとこに。

名を、呼んでもらうこと。

どうか、どうか。

ヴェルラクシェのはるかな道のり、膨大な幸福のはじまりを、わたしといっしょに見守っていただきたいのです。


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