獣になった人ではなく、人の記憶を持つ獣の話

力を求めても叶わぬまま死んだ男の魂が、冥府の神に拾われ、最強の個として生まれ直す。
「トラ」の存在しない世界において一種一頭の個体となる白虎は、人の記憶ではなく獣の力を以て、立ち塞がるものを打ち倒す。
人化もせず、人語も語らず、人に飼われもせず、圧倒的な身体能力のみを武器に、前世で得られなかった強者としての生を謳歌する。


主人公は獣の皮をかぶった人ではなく、その来歴もあり、野生動物として生きることに誇りを持っています。
前世の記憶から人間に親近感を抱きはしますし、異種族と心を通わせる場面もありますが、あくまで自分はトラだという核は崩しません。

私達の世界のトラがそうだったように、白虎もいつか数の力や技術の進歩に、いつかは斃れるかもしれない……そう思わせつつも、でも今は。
その背を追う者達に無言で語り、掻き回し、導く、強い魔獣の足跡を描いた物語。

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