少女の余白を感じさせてくれる作品

恋愛でいい思いをしてきた人間が必ずしも、その後も幸せな恋愛をし続けるわけではないということは、旧弊すれば、嫌でも思い知らされる。逆もまた然りで、悔しい恋を味わった少女が、老齢になってもなお、幸せな夫婦生活を送っていることもありうる。
主人公の年齢では、人生にはまだまだ余白があることを知らないし、「今がすべて」という観念に縛られがちである。だからこそ、散った花は灰になると思い悩んでしまうのだ。
これから、さまざまな体験を通して大人になっていけば、逃がした魚は大したことなかったと思い知るだろう。逃した魚の小ささを知った時が、いい女になった時なのだ。
もし、この作品が、幸せな老年の女の甘酸っぱい思い出話であったら、と想像して読めば、味わいが何倍にも増すように感じられる。