どんな描写技術にも勝る最後の二行

この作品には、情景描写がほとんど出てこないが、最後の二行を読んだとき、主人公がどんな家に住んでいて、どんな有様になっていて、親がどんな服装でどんな人相をしているかなどが、一瞬で頭に浮かんだ。主人公が味わった衝撃も、五感表現もないのに、脳髄に伝わってくるようだった。
技術で書かれた小説も評価に値するが、技術では表現できないものを表現している小説もある。この作品は、後者だと思う。
前者は、経済発展に役立つが、人を救わない。人を救うのは、後者の方だと思う。