異臭のissue(放出)に関する問題(issue)巡る怪奇と恐怖の物語

夫の瑛人と息子の小学一年生の幸太とともに、野沢美代が暮らす新興住宅地である希望台は、ある悩ましい問題点を抱えていた。北の外れにある一軒の家屋が大量のゴミ袋を溜め込んで、屋外にうず高く積み上げられたそれらが強烈な悪臭を放っているのだ。自身の居住区域からは離れているため、直接の被害を被るわけではないにも拘らず、美代は自治会付き合いを切掛にゴミ屋敷に関する論題と向き合うようになる。自主調査とともに徐々に明かされゆく、屋敷と住人たちの血にまみれた過去。悍ましき死の連鎖。"詮索者"たる彼女の熱意が一線を越えたとき、過去よりの闇にわだかまる真実も、この世のものならざる忌むべき異形の臭気を纏ろわせるに至るのだった。平和な家族暮らしの団欒を汚し犯さんとする不浄なる終焉が、じんわりとあるいは急激に、読者の脳髄を、心の視覚と嗅覚から妖しく刺激する。もはや後戻りは出来ない……。