第百三十七話 エピローグ
つまりは? まさかの?
「蔵人よ、ヌシはワシの子孫じゃ」
まっさかぁ〜?
――――あり得ないけど、あり得るのか?
人の未来は無限に枝分かれしている。
中村家は千年以上続く家系だから、なくはないのか?
「蔵人よ、いつかまた再会したいと願掛けして海に流した瓶を、貴殿が拾った時点でワシと貴殿の魂が繋がったのじゃ」
あれは“通天の玉”だったんだ……それで義経に憑依したってワケ?
ってことは家伝として伝わる源氏
「ワシが息子の千代丸に書き残した兵法書がある。それを中村朝盛が興したのであろ」
おそらくはそれであってるのだろう。
ちなみに、と呆れ顔で
「源氏
と聞いてくる。
「万流、
そうかのぅ? と不思議顔の義経さん。
「万流はワシがつけた名じゃ……幼稚に聞こえるかの?」
出どころはキミかぁ。
「
「オレが教わったのはそこだけだけどね」
もう平和な学生ですから、戦術とかいらなかったし。
なんとも情け無い、という目で見られても要らないものは要らないですよ。
「蔵人よ、偶然かも知れぬが貴殿に伝えたい、と思っておったよ。ワシが思いつく
そう言われてしまえば、何やら申し訳なく思えてくる。
「わかったよ。他に残ってないか探してみるよ」
後でやっときます、みたいな?
「それも良いが」
と手を差し出した。
ん? 握手?
戸惑っていると、ほれ、と手を突き出すから握り返した。
すると、膨大な知識が流れ込んでくる。
弓の使い方、槍術、体術に始まって、戦地敵の心理や動きなどなど。
「ぬぁぁぁ――っ」
思わず悲鳴をあげてうずくまる。
「要らねば忘れよ。本来、こういうことはおのれで体得する物だからの。じゃが、いつぞやのように役に立つこともあろう」
と微笑んだ。
「さて、ワシからの礼はコレでしまいじゃ。好きに生きよ、いや……生き抜け」
そう言って義経は消えた。
――――気がつくと朝。
スマホのアラームを止めて、ゴソゴソ起きだすと体調はすっかり良くなっていて、やたらと腹が減ってた。
「ヤッベ……。昨日からほとんど食ってないじゃん」
しょうがねぇコンビニでも行くべ、調理パンでも食うべ、と
ビックリするほど体が軽い。
それと骨が今どんな動きをしているか、それをつなぐ靭帯が、筋肉がイメージできる。
そのまま小走りしてみるとドンドン加速していき、交差点に差し掛かると信号が点滅していた。
「間に合う、今のオレなら間に合う」
キキ――ッというブレーキ音とドンッという衝撃で、敢えなく撃墜された。
すっげぇ、体操なら十点間違いなしだぞこれ!
慌てて車から降りて来た女子が、
「きゃあっ、ごめんなさい、ごめんなさい!」
と泣きそうな顔で謝ってる。
「あ、頭……打ちませんでした? 気分が悪い……とか?
ちょっと待っててくださいね! 今救急車を呼びますっ」
と言う彼女に固まってしまう。
お、驚いたぁ……。
それは彼女があまりにリタさんに似ていたから。
その
『どうぞ召し上がれ』
そう言って差し出される湯気を上げる絶品な料理の数々。
不覚にも彼女を見て、思い浮かんだのは湯気の向こうに見える料理という名の愛情。
ぐう……と腹が鳴る。
昨日から何も食ってなかったのを思い出した。
「腹……減ったぁ」
「へ?!」
それはオレたち二人が出会い、泣き笑いながら過ごす幸せな人生の始まりだった。
《
――――ここまでお付き合いくださいました皆様。
誠に有難うございます😭😭
そして義経ファン、弁慶ファン、歴史ファンの皆様。
誠に申し訳ございません。
きっと皆様の中にある義経像や弁慶像とはかけ離れた物語だったかも知れません。
判官贔屓の言葉がある通り、彼は悲劇のヒーローだからこそ、我ら日本人に刺さるのかも知れません。
ですが、私はあのままでは嫌だったのです。
浦島太郎さんも乙姫も然り。
みんなハッピーな物語が読みたくて、創作致しました。
のですが拙い私の筆力では、コレが精一杯です。
願わくば架空の物語として、笑って許してくだされば幸いでございます。
なにかと忙しい師走でございます。
皆様におかれましては、お忙しいとは思いますがくれぐれもご自愛くださり、良い年の瀬をお迎えくださいませ。
かしこ。
2023年12月
クロウさんは冒険しないと気がすまない?! 義経と浦島太郎が出会ってしまって冒険へ巻き込まれる竜宮アドベンチャー カダフィ @yosinotyu
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