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一匹は殺した。頭を投げつけた奴は半死、もう一匹はスタミナ切れマジヵ。


 ギィイイとモーターの激しく回る音と供にジャンクマンはしゃがみ込む。吹き飛ばした半死のトロールを視界にとらえ、狙いを定めると標的目掛け一直線に飛び出す。


 豪風の音を体にまとわせながら、ジャンクマンは右腕を引き、ダウンするトロールの攻撃間合いに入った瞬間、前に突き出す。


 人間が何十人も束になっても歯が立たなかった相手だったが、速度をつけたジャンクマンの拳一撃で上半身が破裂したかの如く肉の塊となる。


 二体目。


 それを見た三体目のトロールは動揺を見せ、後ろに飛び距離をとると地面に無数にあるゴミを一掬しジャンクマンめがけ投げつける。


 凄まじいスピードで投げられる鉄くず、人間が当たれば生死にかかわる一撃。だがジャンクマンは糸を通すかのように微かな動きで避けながら最後の一匹めがけて歩き出す。


 トロールは投げるのをやめない、投擲しながらも徐々に後ずさりしてゆく。近づけさせれば殺されると本能で察しているのだ。


 何とか、生き抜ける方法を小さな脳みそで考える、そして一つの策が頭位一杯に思いつく。


 トロールはジャンクマンへの投擲をやめ、角にいる二人の人間に目をつけたのだ。


「ウォオおおおおおおおおおおおお」


 と大きな雄たけびと共に再びゴミの投擲を始める、今度は人間に向かって。


 ジャンクマンはトロールが止まった時、ゴミ捨て場の角の人間を狙うことを思いついたことに気がついていた。


 だがそんな事ジャンクマンにはどうでもいいこと、このゴミをかたずける。それがキドウシャの願いなのだから。


『シルファを死なせたくない』


 けれどキドウシャの言葉が回路に引っかかる。あの角にいる人間はシルファという人間なのではないのかと。


 だが守ろうにも、無数の弾丸のようなゴミを全て撃ち落とすことなんて今の装備では不可能だ。


 不可能、不可能か。なら、あの人間のもとにたどり着くまでに可能な方法を考えるのみ。


 ゴミを投擲する動作を確認した瞬間、ジャンクマンは二人の人間のもとへ走って二人の手を掴んでいた。

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