5
良かった、ジャンクマンは無事だ。
衝撃の正体は三体目のトロールが真横に降ってきたこと。
その風圧でジャンクマンと共にゴミ捨て場の端まで飛ばされてしまったが、何とか生きている。
パトロールロボットも手の中にある、これで……。
「いっだあああああぁああ」
足を動かそうとしても両足が動かない、それどころか本来曲がるはずのない方向に両足が向いていた。
死ぬ、死ぬほど痛い、痛い、痛い。両足を切り離してしまいたい。
こらえろ、痛みを忘れろ、今はジャンクマンに電源を。
そう思い腕の力だけで作業しようと試みるが。
体が起き上がらない、腕で体を持ち上げようにも力が出ない。原因は腹部からの過度な出血。
倒れたままここで終わるのか。こんなに近くに希望があるのに。
遠くから見ていてもわかる、自分とジャンクマンのために次々と人の命が崩れ去っていることに。
シルファ、僕はどうしたらいい。体が動かないよ。
目から涙が何粒も零れ落ちる。止めようとしても止まらない。
そんな歪んだ視界で暗黒の空を見つめ、空に手を伸ばしながら。願いをつぶやく。
「死にたくない。シルファを……死なせたくない。二人で地上に……シルファは医者になる夢をかなえて、僕は……広い空を……」
そんな小さな言葉に反応したかのように視界の端に映るジャンクマンが少し青緑に光った気がした。
ジャンクマンの方へ体と顔を向けると、電源パーツが自分の血液に反応し輝きを放っていた。
『ジュ――』とブロンドボディーの体から白い煙を上げ、焼ける鋼の匂いを放つジャンクマン。
その光景を見てハノは確信する。ジャンクマンの原動力は血液であるということに。
自分は間もなく死ぬと分かっているというのに、ジャンクマンが動いているのを見るだけで不思議と笑いがこみ上げてくる。
「願うもんだな。神は何処にもいないと思っていたけど、撤回するよ」
涙を腕で拭い、ジャンクマンの電源パーツについていた細く小さな針のついたチューブを最後の力で引っ張ると。
「……行け。この街に降ってきたゴミを片付けろ、ジャンクマン‼」
強い思いを言葉にし、思いっきり針を腕に突き刺した。
その瞬間、白いチューブが真っ赤に染まりハノの血液を高速で吸い上げる。モノの数十秒でバッテリーが満タンになり、ハノが倒れるのと同時にジャンクマンは立ち上がる。ブーンと不快な機械音を立てながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます