ジャンクマン

不明

1

 太陽が輝く日差しの下、今日も街は賑わい人々が地面を歩く。


 買い物に外に出てきた人を捕まえうまい話で商売をするもの、またあるものは街の平和を守るために兵を。


 そんな普通の人々が暮らす地上から約三百メートル下層の地下世界、僕はゴミの上にたち空を見上げていた。


 地下の世界には空からの光は無く、上を見上げても底知れぬ暗黒が見えるだけ。『落ちてきた』古ぼけたランプの炎がこの地下世界唯一の明かり。


「おいハノ‼ いつまで落ちてくるか分からない物をぼーっと待ってつったってんだ。少しはこの山の中から使えるものでも探して働け‼」


 近くでゴミあさりしている何歳も年上のおじさんに怒鳴られるものの、いつもの事なので動じずにしゃがみこみながら。


「ああ、うん。今やる」


 少年はから返事で言葉を返した。


 地上から捨てられ、廃棄されたものがこの地下世界のゴミ捨て場に空から降って来る。その中から使えるものを拾い金に換える。それが今の僕の仕事、好きか嫌いかで言えば僕は好きだ。金になる物はごくわずかだが修理すれば自分で使えるものも作れるし、それに。


「お~こりゃぁワインじゃねぇか。うん、傷がついているだけでビンも割れてねぇ……くぅ~今日はついてるな」


 お宝が見つかることもある。だが大きい声でお宝を叫びテンションを上げていると。


「おい、これは仕事をしていた皆の物だろ。金に換えて皆で山分けだ」


「は? 俺が見つけたんだ。それに金に換えるなんてもったいねぇ、俺だけが飲む」


「んだと!」


 とこのように周りでドンパチ騒ぎの喧嘩も日常茶飯事。にしてもあのおじさん学習しないな。お宝や個人的に使えるものは僕みたいに静かに作業しながらゴミの奥底に沈めて仕事が終わった後で回収すればいいのに。


 騒がしい仕事仲間が蠅が群がるかの如く増えるのを無視しながら黙々と作業していると、ゴミ捨て場の周りの暗闇からいくつかの光がこちら位向かってくる。それが何か目視できるほど近づいてくると、周りで騒いでいた仕事仲間は次々と何事もなかったかのように最初の二人を残して作業に戻る。


「げ、治安部隊の連中だ」


 周りの口から出る治安部隊とはその名の通り治安を維持するために結成された集団。悪党が蔓延るこんな街だからこそ必要とされ街の経済資金から活動資金を得て動いている。


 だが彼らも地下街出身の者、贅沢な装備はしておらず皆ガラクタを鎧に改造したものを身に着けているだけで身に着けていなければ一般人と見分けがつかない。一般人と治安部隊を見分けるためには肩に巻かれた赤い布で見分けるしかない。

 

 騒いでいた二人に隊長らしき人物が注意を促している最中、その隊の中から一人こっちに気づくと笑顔で手を振りなが駆け寄って来る。


「ハノ、今日の収穫はどうだった?」


「まあまあ」


「ははっ、ハノもいつも通りだな」


 さび付いた剣を肩に下げ、僕よりも三歳年上の男。名前はシルファ僕の恩人の息子であり親友でたった一人の家族だ。


 僕は赤子の頃にこのゴミ捨て場に落ちてきて、誰も引き取り手が現れないそんな時シルファの母親が名乗りでて、引き取られた後も優しく接してくれて十五年間文句も言われずここまで育ててもらった。


 そんな今までの人生を一緒に過ごしてきたのだが一か月前母を病で亡くし、その後治安部隊に入り仕事をして、小さい頃は喧嘩もしたけど今はこうして仲良くしている。


「目標量も回収したし、そろそろ仕事切り上げようと思っていたから丁度良かった。今日もあの場所に行くから来てくれないか」


「了解、いつも通りおっちゃん隊長にハノを警護するからって言って抜けてくる」


 普通の人間なら駄目と言われるだろうが街灯、発炎車(四輪走行。車のような物)、そしてパトロールロボットを作った数少ないメカニックのハノには多少の我儘が許されている。


 遊ぶ、寝るからなどの理由で仕事を休むなどは不可能だが街に利がある場合は別。この街にとってハノは他のメカニックが諦めた空を求める存在、最も地上に近い希望と呼ばれる存在。仕事も普通にこなし悪事もしないハノを誰も止める理由など無い。


「おっちゃんノリノリで行ってこいってたよ。俺より信頼されてるね~このこの」


「時間が惜しい。納品してきたから早く移動しよう」


 小突いてくるシルファをスルーし大きな袋を片手に目的の場所まで歩き始めた。


「ちょ、馬鹿、一人で行くなって、俺がいないと危ないんだぞ」


 お茶らけていたシルファだったが一人でさっさと行ってしまうハノに焦り、駆け足でその後を追いかけてゆく。


 それもそのはず、今から向う場所の前にならず者が沢山住む場所を抜けなければならないのだから。

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