おわりに


 私に取り憑いた「顔の怪異」。

 その最終目標だったであろう、『読むと「顔の怪異」に取り憑かれる呪物を完成させて世間に発表する』ことは、本当に寸前の寸前で阻止されることとなり、私はどうにか生き延びることが出来ました。

 後は余談になりますが、私は数ヶ月の療養を要したものの、特に後遺症に悩まされることもなく無事に社会復帰を果たして、現在に至っております。


 これにて、私の恐怖体験談は終わりです。


 想定よりも、随分と時間が掛かってしまいました。

 長々とお付き合い頂きましたこと、心よりお礼申し上げます。

 本作『Re:Re:Re:Re:ホラー小説のプロット案』はいかがでしたでしょうか。

 もしも多少なりとも怖がったり、面白がったりしていだだけたのであれば、これほど幸いなことはございません。



 そして、最後に一つだけ。



 ここまで読んでくださったあなたは、きっと不思議がっていることでしょう。



 だって、おかしいですよね。



 私が「顔の怪異」に強制されて紡がされたのは、私が知った・経験した順に記録した「顔の怪異」に関する一連の恐怖体験談です。そしてそれを読んだ者は「顔の怪異」に取り憑かれてしまう――そんな呪いの作品でした。

 だから私は、その原稿データを削除しました。

 普通の感覚を持つ人間なら当然そうするでしょう。誰にも読まれず、誰にも知られず、怪異は拡散されることはありません。世界の平穏は守られます。



 だとすれば、どうして本作がここカクヨムに投稿されたのか。



 お礼よりもまず、お詫びをしなければなりません。

 私はどうしようもなく、創作に取り憑かれた人間なのです。

 ろくな才能がないと分かっていてもなお、重く拗れた巨大な感情を向ける唯一の親友を喪ってもなお、自分自身の頭がおかしくなって死にかけるような出来事を経験してもなお――その在り方を変えることは、出来ませんでした。

 凄まじい作品を作り出し、世に発表したい。

 満たされぬ渇望の最中、ふと気づいたのです。



 読むと本当に呪われ、怪異に取り憑かれる作品。

 それが凄まじい作品でなくてなんだというのか。



 だって、これは、「本物の怪異」なのです。

 衝撃的ですし、リアリティも充分、興味も惹かれるはずでしょう。

 実際に幾人も犠牲者が出た危険な存在、その実録。これ以上なく凄まじいじゃないですか、読みさえすれば必ず超常的な怪奇体験を出来る作品だなんて。

 唯一無二の新しいジャンルになりますよね。


 抗いがたい衝動でした。それでも最初は妄想の中だけで留めておこうとは思ったのです。なのに、私はゴミ箱の中に、この原稿データが残っているのを見つけました。見つけてしまいました。まだ完全に消去していなかったのです。


 それはもう、迷いに迷いました。


 だけど、そこで人として正しく理性的な選択を出来るのであれば、元よりここまで創作なんてものに執着せず、始めから凡人らしくありふれた生き方をしてきたでしょう。



 つまり、私は我慢できませんでした。



 そういうことなのです。

 本当に、ごめんなさい。



 でも、別に、構いませんよね。

 この世界だって、どうせ誰かの作った創作物みたいなものですから。



 さて。



 それでは、そろそろ。




 誰かに視られているような感じはしませんか。




 その行動は本当に自分の意思によるものですか。




 だったら、あなたの後ろにいるのは、何?




<完>

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Re:Re:Re:Re:ホラー小説のプロット案 Rinto @rintoh0401

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