第28話 人類の滅亡
2038年10月11日 12時27分頃 とある人間同士の音声通話にて:
「巨大な物体、いや、ゼロ・トリガーのせいで、既に何人の人間が死んだ?」
「正確な数は誰も把握できていません。だって、そうでしょう?外に出れば死ぬ。部屋の中にいても死ぬ。どのみち、私たちは死ぬんですよ」
「つまり、ゼロ・トリガーの放つ光に当たることなく、生活できさえすれば、生きられるというわけか」
「おそらくはそうですね。ですが、考えてみてください。光の入らない部屋や、地下に、人がいつまでも閉じこもっていられると思いますか?」
「無理だな」
「そうなんです。どこの家にも、たいてい窓がある。そうじゃなくても光の入る隙間がある。だから結局は、どこで死ぬのかという違いしかないんです」
2038年10月13日 3時19分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:
「さて、久しぶりの散歩でもするかな」
「待って!ゼロ・トリガーの光を浴びたら、灰になって死ぬよ!」
「体験したら死ぬようなことなのに、どうやって知ったんだい?」
「動画サイト上のライブ映像だよ。間接的に見る分には、何も起きないんだ」
「そうかそうか。でも、私は行くとするよ」
「なんで……!?」
「ここにいると息が詰まる。もう疲れたんだ……」
2038年10月16日 16時42分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:
「もうダメみたいだ。お前のこと、最後まで守るって言ったのに……」
「気にしなくていいわ。私もすぐに……、そっちに行く」
「ありがとう……。そしてこんな夫でごめん……」
「ううん、私の方こそ楽しかった……」
「愛してるよ、マーラ」
「私もよ、バルト」
「お別れだ……」
「ええ……」
「……」
「……」
2038年10月18日 19時03分頃 とある媒体に録音された人間の独り言にて:
「くっ、はぁ~~。身体に……、力が残ってないのか……、起き上がれそうにねえや……。このまま……、横になって死ぬのも……、悪く……、ねえかもな……」
2038年10月19日 5時11分頃 とある人間同士の音声通話にて:
「……」
「…………」
「………………」
「……………………」
2038年11月6日 00時50分頃 とあるメディアのラジオニュースにて:
【ザーー、ザザッ、ズザーー、ズザーズザザッ、ザ、プツン】
ZERO TRIGGER 刻堂元記 @wolfstandard
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