第27話 灰化

2038年10月10日 11時54分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:


「そろそろ、昼飯食いに行くか」

「もう時間か。じゃ行こう」


「やっぱり外は暑そうだな」

「実際暑いだろ。この気候じゃ……」

「ん、どうした?黙ってないで、続き言えって。お前らしくないぞ。ってあれ、いない?どこに行ったんだよ!そうか、そういうことか……」



2038年10月10日 12時15分頃 とある人間同士の音声通話にて:


「どうなっている?破壊を急げ!」

「はい只今……」

「遅いぞ、早くするんだ!」

「……」

「聞こえているのか!?返事しろ!」


【カタン】


「おい、仕事を放棄するな!返事をしろ!」



2038年10月10日 14時38分頃 とあるメディアのニュースにて:


「こちら、建物の外に設置されているカメラから撮っている映像なんですが、見て分かりますでしょうか。人の気配がなく、あちこちに灰の山のような物があります。なぜ、公道ともいえる場所に、灰の山が出来ているのでしょうか?空に浮かぶ巨大な物体、つまりはゼロ・トリガーが原因だと言う人もいますが、詳しい情報は、現時点で、全く入ってきておりません」



2038年10月10日 16時23分頃 とある動画サイト上のライブ映像にて:


「今の時間、外に出ると、何が起こるか。私が身をもって体験するので、よく見てください。これは作り物ではありません。そして、私自身、最後のライブ配信になるかもしれないことを、事前にお伝えします。それでは、外に出ましょう。暑いですね。汗を掻きそうなくらい……」



2038年10月10日 16時31分頃 とある媒体に録音された人間の独り言にて:


「外に出たら死んじゃうんだ。灰になって死んじゃうんだ……。怖いよ、死にたくないよ……。誰か助けてよ……。ねえ、誰か……」



2038年10月10日 17時07分頃 とある人間同士の音声通話にて:


「外出したら死ぬんだろ?外に出なければいいんだよ」

「でもそうすると、餓死するけど?」

「地面を掘って、地下に穴作って、そこで暮らすしかないか」

「その前に、体力が尽きる」

「地下シェルターは家の外だしな。ホント、どうすればいいんだか……」

「困るよね。俺たちの国には地下道なんてないし」

「それはある。まあ、部屋の中から外を覗くくらいなら平気……」

「外の様子はどう?」

「……」

「聞いているなら、何か言ってよ」

「……」

「応答がない。もしかして……、いや、そんなはずは……」

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