第5話 整理整頓
キーンコーンカーンコーン
私は昨日の夜もなっていたチャイムで目を覚ました。
今の時間を確認しようと部屋を見渡したが、そういえばこの部屋には時計がなかった。
とりあえず部屋から出て円卓へと向かった。
円卓には、帝威さんと天王野君、中島さんにバーガンディさんの姿があった。
「おはようございます」
私がそう挨拶すると。帝威さん以外は挨拶を返してくれた。
「ほかのみんなはまだ起きていないんですかね」
「おそらくそうだとおもいますわよ」
「もう10時になるころだし、そろそろ起こしに行きましょうか」
中島さんの言葉に、私は反応した。
「え、時刻がわかるんですか?」
「あら、気づいてなかったの?ルールブックに時間は表示されてるわよ」
私はポケットからルールブックを出すと、タップして電源を付けた。
確かに現在の時刻と思われるものが表示されている。
こんなもの、昨日私がみたときもあったか?
気づかなかっただけだろうか。
「じゃ、起こしに行きましょう」
そういって席を立った中島さんに、私たちはついていった。
順々に部屋を回っていく。
「あぁ、おおきに。すまんな朝は弱いんや」
「起こしに来てくれたんですかぁ!?ありがとうございますぅ!」
「うん?どうしました皆さん!」
「え、私を起こしに!?それはどうもありがとうございます!」
「ちょうど今起きたとかだったんですよ!」
順調に人が集まってきた、最後は鷹丸さんだ。
ピンポーン
「・・・」
ピンポーン
「・・・」
インターホンを押しても出てこなかったので、中島さんがノックしながら呼びかけた。
「鷹丸さーん!起きてますかー?」
「・・・」
それでも返事はなかった。
「もしかして」
「殺されてたりしてね...」
天王野君がそういった。
「冗談でもそういうことはいうものではないですわよ」
「えー?みんなだって薄々思ってたんじゃないの?」
「すまない!寝坊してしまった!」
「あ、生きてた」
鷹丸さんが部屋から飛び出してきた。
良かった、天王野君が縁起でもないことを言うから余計な想像をしてしまった。
「いつもは6時にはおきるのだが...なぜか起きられなかった!申し訳ない」
「大丈夫よ、じゃ、円卓に行きましょう。」
円卓に座った私たちは昨日の続きを始めた。
「昨日は、バーガンディさんが何かを提案しようとしたとろで謎のアナウンスが入り、解散になったわよね。」
「えぇ中島さん、その通りですわ。」
「何を提案しようとしてたのかしら」
「わたくしは、一度状況の整理をしたほうがいいとおもいますの」
「昨日は俺提案の自己紹介だけで終わっちゃったもんね」
「確かに今一番にするべきは自分たちがおかれている状況を把握することかもしれないわね、バーガンディさんの案でいいと思うわ」
ほかのみんなも中島さんの言葉に賛同し、その反応を見たバーガンディさんが話をつづけた。
「昨日の夜に部屋である程度話すことをまとめてきましたわ。」
「まず、わたくし達が閉じ込められているこの空間について、ですわ。」
「わくしたちの部屋は横並びになっていて、確認した限りだと全員同じ作りのようでしたわ。部屋を出ると通路があり、両端に扉がありますわ。片方はこの談話室へとつながる扉なのですが、もう一方の扉の奥には何があるのかは現状わかりませんわ。」
「わからないのですか?」
爽谷華さんがそう質問した、かくいう私も同じ疑問を抱いていた。
「えぇ、あの扉は開きませんの。ただ、扉の横に【キッチン】と書かれた札が貼られておりましたわ。」
「この談話室へと続く扉にも【談話室】と書かれた札が貼られている以上、あの扉はキッチンへと続いている...と考えるのが妥当じゃないでしょうか。」
「そしてこの談話室にも扉が二つありますわね。一つはお風呂場で、もう一つは開きませんでしたわ。」
「しかも...何も札や目印がなかったんですの」
「ですので、談話室の開かない扉に関しては、何もわからないですわ。」
(近況ノートに部屋の見取り図があります!ぜひご覧ください)
「へー、風呂があるんだ!ここにきてからみんな昨日は風呂に入ってなかったからか、ちょっと臭かったんだよね!助かるよ!」
「なっ...!」
「ちょっと、失礼よ」
「あーごめんね爽谷華ちゃん、中島ちゃん、嘘だよ。」
天王野君の冗談?のせいで場の空気が少し悪くなったように感じる。
「ま、まぁこの場所についてはこんなところでしたわよ」
「あ、あのぅ...」
自信なさげな細い声が耳に入った。
「さっきバーガンディさんが【キッチン】と書かれた扉があったっておっしゃってましたよね...?」
「えぇ、それがなにか?」
「えぇと...その...」
「なんだ、さっさと話せ」
帝威さんが彼女をにらみつけた。
「その...私の特権、【食事係】なんです」
「なぜそんな重要なことをさっさと言わない!昨日そこの女が食事係にはルールの七番が適用されないといっていただろう!」
「ひぃ!ごめんなさいぃ!」
「言い出すタイミングが、み、みつからなくてぇ」
「まぁええやないの、そんな怒らんでも」
「海琳ちゃん、迷惑だなんて思わないから、自分の考えがあったらいって構わないのよ」
「ごめんなさいぃ気を付けますぅ...」
「それで、その...みなさんおなかがすいていらっしゃるんじゃないかと思いまして...」
「私が食事をご用意しようかな、なんて...」
「確かに、昨日から何も食べてないもんねー」
「料理するというのなら!僕も手伝おう!」
「え!いいんですかぁ?鷹丸さん」
「料理は得意なんだ!」
他の皆も海琳さんに頼み、食事を用意してもらうことになった。
「じゃあ鷹丸さん、キッチンまでついてきてもらえますか?」
「うむ!」
「俺もついてってええか?」
「海琳ちゃん俺も行っていいかな」
「なんや、天王野もかいな」
「え、天王野君と花道さんも手伝ってくれるんですか!?」
「こんなに優しくされたの初めて...」
「あー、そういうわけじゃないんだけどね。ただ【特権】をどんなふうに使うのか知りたくてさ。」
「俺もやすまんけど料理はできんで、不器用でな」
「そ、そうですよね!勘違いしてしまってお恥ずかしい。」
「じゃあキッチンまで向かいましょう...」
やや落ち込んだように見える海琳さんは、鷹丸さん、天王野君、花道さんをつれてとぼとぼと部屋から出て行った。
『・・・』
4人が出て行ったあと、誰も、何もしゃべらなかった。
だがそれは気まずさ故ではないようだ。
各々、何かを考えこんでいる様に見える。
爽谷華さん以外は。
私もそうだ、よく喋る天王野君と花道さんがいなくなって少し静かになったこの円卓で、感じる違和に頭を悩ませていた。
「何か釈然としないな...」
模倣犯 @mochinaru
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