セクハラ上司を殴って職場を解雇された翌日。目を覚ました黒日テイシは、出口のない館に監禁されていた。館には自分と同じ境遇の人間が九人。生存者の中に首謀者が潜み、殺人を行うと宣言した。館から生きて脱出するには30日間を生き延びるか、首謀者を特定し処刑すること。生き残りをかけたデスゲームがはじまる。
館に集められた十人は、銀行員、探偵、法学生など職業も年齢もバラバラな男女たち。その中にはテイシの幼馴染・赤富士マコがいた。素直すぎるマコを守るため、スタンドプレーをとったテイシは危険人物として周囲に認識されて窮地に陥ってしまう。
生存者は一癖も二癖もあるくせ者揃い。優しそうな顔も、怯えた顔も、怒っている顔も、すべてが演技かも知れない。生き残るために協力と裏切りを繰り返し、したたかに知恵を巡らせる十人の騙し合いが手に汗握ります。
テイシはマコを守れるのか? そして殺人トリックは? 首謀者の正体は? 殺し合いと騙し合いのデスゲーム×ミステリーです。
(「注目の自主企画から選んだ作品」4選/文=愛咲優詩)
すごい作品です!
ある無関係な10名が、なぜか舞台となる施設に閉じ込められ、そこで殺人事件が起き……、という米澤穂信氏の『インシテミル』を彷彿とさせる内容ですが、ここではただ生き延びるだけではなく、『クビ』と呼ばれる殺人犯を投票によって決定し処刑しないといけないという、凄まじいルールが存在します。
これによって、『クビ』から身を守るだけではなく、自分が『クビ』だと思われないような心理戦まで求められ、大変ボリュームのある内容となっております。
これだけのからくりが存在しますので、第1章だけでも読みごたえ抜群ですが、『クビ』が誰なのか看破されると思いきや、まだまだ終わらないという。推理力のない私は、さっぱり誰が『クビ』なのか見当もつきません。
読了までレビューしないつもりが、我慢できずレビューしてしまっております(笑)。
まだ作品は続きますが、これだけでも充分に★3つでおすすめできるレベル!
実写の映画としても、かなり面白くなりそうな作品です★
昨今『ゲームみたいな』ミステリィ小説は別に珍しくはないが、本作は何と最初から『ゲームであることが前提』のミステリィ小説だ。
例えば、読者がいつでもコメント等を述べることができて、作者のほうもこれまたただちに作品に反映することができるといった、ネットならではの特長を最大限に生かした、これぞ時代の最先端を行く作品とも呼び得るだろう。
よって、本作は最初からすべてにおいて、読者が本作をゲームとして見なし、自らも参加し、我がことのように楽しむことができるように、徹頭徹尾設定されており、登場人物は主人公やヒロインも含めて単なるゲームのコマに過ぎず、ストーリー自体もただの状況説明でしかなく、重要なのは全キャラ揃っての推理討論のフェーズのみとなっている。
言ってみれば、ネット小説版『人狼ゲーム』であり、TRPGであるようなものだ。
しかも何よりも驚きなのは、いかにもトリックスター的なぬいぐるみ型AI『ポリス君』として、文字通り『作者』に該当するキャラクターが作中に存在していて、このゲーム世界のすべてを仕切っており、登場人物の中に潜みすべてを操っているはずの『真犯人』すらも、単なるゲームのコマとして扱っていて、最初からこの世界が現実なんかではなく、小説やゲームの世界であることを明らかにしている点である。
「──よって読者の『貴様ら方』においても、別に主人公等に感情移入する必要なんてまったくなく、この小説におけるすべてをゲームと割り切って、存分に楽しむがいいであります!」(byポリス君)
1章が終わったら絶対レビューを書きたいと思っていた作品でした。
この度は第一部完、おめでとうございます。
濃厚な推理小説であると同時に作者のお茶目心満載なミニコーナーを携えて送る、刎ねるディスカッション。
奇天烈で悪趣味な殺人ゲームマスターAI「ポリス君」主導の元、脱出不能な屋敷の中へと拉致軟禁されたプレイヤー達は、たった一人、このゲームの主催者であり、黒幕、「クビ」を名乗る人物が自分達の中に紛れ込み暗殺を企てている事を知らされる。
誰か一人が殺される度に開始される推理型答弁ゲーム『刎ねるディスカッション』を経て、投票により奪われる命は自分か、他人か、はたまたクビか……
この作品の面白い所は本当に真実に辿り着く必要が無いという事でしょうか。
作中での最も大切な部分は当然、何より自分の命。
自らが犯人と疑われた際にそれを否定する詭弁、他人を犯人に仕立て上げる虚言すらもゲームの見どころであり、ただの推理では終わらないゲームとしての側面が物語を非常にうまく盛り上げています。
挑戦的な作者様もといポリス君から、作中の謎に対するヒントもあれば、ネタバレOKな討論の場も用意されているのでミステリー好きな紳士淑女の皆様
是非モニター越しに『刎ねるディスカッション』を御覧ください。
何処ぞかの推理ゲームを彷彿とさせる幕開けですが、参加者全員が推理の素人であり(一部を除いて)無関係という設定だからこそ、猶更ドキドキ感があります。
また殺人が起きてから犯人を見付けるのではなく、最初から真犯人の存在が明らかとなり、そして人々の為人を真に理解して真犯人に辿り着くという回りくどさも特徴です。
その為人が果たして嘘偽りのないものなのか、かと言って深く追求すれば返って自身に疑惑の目が向けられかねない。そんな駆け引きが楽しくもあり恐ろしくもある。
独特な推理ゲームがお好きな人は、是非一度この作品を読んでみてはいかがでしょうか?