第1話 転生?

真っ白な場所に居た。

雲の上?

居たと言うべきかもわからない。

足元を見ても足がない。

それどころか体が無い。


久しぶりに痛みを感じない。

不思議な感覚だ。

生きているのか?

死んでいるのか?

それすらわからない。

ただ、ひとつ言えるのは

もし俺が死んでいるのなら、

死んだ時に幸せホルモンがどうの、

とか言う話は嘘だ。

まあ、あの現実から逃げられたのなら

それは幸せかもしれない。


「お待たせしました。石川拓真さん。」


声が聞こえた。

綺麗な声だった。

耳を経由せず直接脳に響くかのような声。

声のした方を見ると、

美しいと言う言葉を具現化したような

とても美しい女性が立っていた。


「女神か何かですか?」


「まあそんなところです。私の名前はキアラ。あなたの今後について話に来ました。」


「今後…ですか。」


「ええ。まず初めに、あなたには転生してもらいます。」


「転生ですか。てっきり天国的な場所に行けるのかと思ってました。」


「下界では、大勢の方が天国に行けるって思ってるみたいですが、

天国に行くパターンはごく稀なんですよ。」


「というと?」


「まず、死にも二つあります。一つ目は寿命、運命による死。

そしてもう一つはあなたのように、自殺による死。」


「俺みたいに自殺した人は転生するって事ですか?」


「いいえ、あなたの自殺して転生も稀なパターンですね。まあ、あなたの転生は少し特殊なんですが。」


「できれば詳しく教えてもらえませんか?」


「好奇心旺盛なんですね。」


「来世の為を考えたら知識は多い方が良いですからね。」


「生命の数は決まっています。」


「生命の数?」


「例えば、地球に存在する生命の数が100億だとすると。100億を超えることはありません。その数字を下回る事も基本的にはありません。ただしそれは運命での死、その場合に限ります。つまりあなたのように自殺した人がいた時100億を下回るということです。」


「生命の数って、地球ができた時から最大値は変わってないんですか?」


「いいえ、変わってますよ。最大値は増えてます。生命の数が最大値を超えた時、それを超えないように自然を動かしたり運命を弄ったり色々してるんですが…」


「今、さらっととんでもないことを聞いてしまった気がするんですが。」


「ですが実際、最大値は増えてます。それは本来死ぬはずだった人達が、医学の進歩などによって生きた結果なんです。これを天界では奇跡と呼んでます。」


「本来死ぬはずだったって、結局神々のおもちゃなんですね。」


「前置きが長くなりましたが死んだ後のパターンを教えますね。」


運命による死

①人間として生まれ変わる

②人間以外の生物に生まれ変わる

③生命の数が最大値に達している場合、天国で生命の空きができるまで待機


自殺による死(審査有り)

①守護霊として生まれ変わる

②地球が終わるもしくは奇跡が起きるまで待機


「今回のあなたは審査の結果、守護霊として生まれ変わってもらいます。あなたと近い境遇に居る人の守護霊として生活し、その人を守ってください。拒否権はありません。」


「死んでも誰かの評価で物事が決まるんですね。守護霊が本当に居るなら、生前の俺も守って欲しかったです。だいたい、守るってどうやって守るんですか?霊なんだから人間に触れられないんですよね?」


「おっしゃる通り人間に触ることはできません。ですが生命以外の物には触れる事ができます。下界ではポルターガイストとか超常現象とか言われてますが。それ以外にも…いや、今はこのぐらいにしておきます。」


「どうせ選ぶ権利も無いんだし、ここで文句言っても意味ないんですよね。」


「正解です。それでは早速ですが、守護霊としての一生を始めてもらいます。」


キアラが指を鳴らした。その瞬間辺りが光に包まれて…


「辛い人生を送ってきただけあって感情が麻痺してるね。可哀想に。」



見た事がない部屋に移動していた。

誰かが寝ていた。

どこかで見た事がある顔だった。

思い出した。

同じクラスの星川優香、

クラスで中心的な女子生徒だ。


「コイツが俺と同じ境遇?まさかね。」


クラスメイトだった星川優香の守護霊になった石川拓真。

これから予想だにしない守護霊ライフが始まる。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アナタヲマモルセイ @rappulu1412

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ