嫌な事には蓋をして
Renon
目を瞑る
暗い部屋。静寂が空気を満たす。どれほどこうしていただろう。毎日に変化などない。ただ過ぎゆく時間の流れに身を任せて、私はただ目を瞑る。
お願いだから、、、誰も私を起こさないで。
あれはいつの事だっただろう。
白い壁で覆われた無機質な部屋で、幼い私はただ絵を描いて遊んでいた。
気づけば目の前には白衣を着た男の人が立っていて、まるで汚れたものを見るかのような蔑んだ目で私とその絵を交互に見ていた。
それから数日間。今まで支給されていた食料が途絶えた。激しい空腹に襲われる。意識は朦朧とし、視界は歪む。目に入るのは微弱な明かりのみ。水一滴すらも与えられなくなった私の体は、持ち主を失ったように床に落ちていた。
最後に耳にしたのはあの男の鼻にかかった笑い声だった。
コップに一杯の水を入れ、シンクに寄りかかって勢いよく飲み干す。冷蔵庫を開ければ、白色灯が暗闇に慣れた私の目を刺激する。
だる、、、なんもないじゃん、、、。
重い体をひきずってそこら辺にあったパーカーに袖を通せば、ボサボサの髪のまま外に出る。
まぶし、、
「あら、こんにちは。」
「、、っと、こんちは。」
誰だっけあの人。
後ろ目に見れば、隣の部屋に入って行った。
あの部屋、人いたんだ。
日の光をできるだけ目に入れないよう俯いたまま駐車場を歩く。
「うわっ、、」
急に目の前に人がいて思わず声を出してしまった。顔も見られたくないので俯いたまま横を抜ける。
「、、莉奈さん。」
え、、振り返ればそこには40代くらいの男性がいた。
「あの、、なんで、私の名前、」
そう聞けば、その男性はただ軽く笑った。
鼻にかかったあの声で。
嫌な事には蓋をして Renon @renon_nemu
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