第4話銀髪美人留学生のクール度は?

「えーと、とりあえずイキシアさん? 唐辛子スプレーは危ないので回収しますよ」


 「えっ! あっ!」


 俺はイキシアさんからヒョイっと唐辛子スプレーを取り上げて、一応パッケージを見てみると


 (目に入るととても危険です。絶対に人に向けたりしないでください)


 ......回収しといてよかったー。流石に本当に吹きかけようとはしてなかったと思うけど――


 イキシアさん?


 何でそんなに名残惜しそうにスプレーを持ってた手を見つめているんですか!


 「あ、あのー」


 申し訳なさそうな声が足元から聞こえてくる。


 「あのー俺は今日、ミーチューさんに謝罪するために来たんですけど......だからイキシアさんとバトるつもりはないんですが......」


 「......あら、そうだったのね、早とちりしてわかるかったわ。――ってあなた今ミーチューって言ったわよね?」


 「えっ、そう言いましたけど......。も、もしかしてミーチューってことは秘密でしたか?」


 金チャは慌てて俺の方を向いてくる。俺はこの瞬間どっと背中に寒気が走り、冷や汗が止まらなくなった。イキシアさんのクールな目が亜寒帯ぐらいの冷たさになって


 「......葛篭くんはあのミーチューだったんだわね。......覚えてるわよね? この前私が最近ハマっている配信者がいるって言ったこと」


 「は、ははっ! もちろんにございます!」


 俺のことをくん付けで呼んでる時点で既に事態は災害級。


 「それで? 私がミーチューのことを褒めてる時葛篭くんはどう思ってたの? 馬鹿にしてた?」


 クールさがすでに亜寒帯を超えて寒帯に入り込んできた。


 「め、滅相もございませんって......こんな言い方はよくないですね」


 俺はフザケているような敬語をやめて、正直に自分の考えを話すことにする。


 「イキシアさん、今まで黙っていてすみませんでした。俺は、イキシアさんが俺の配信を褒めてくれた時、本当にうれしかったんです。だけど......俺はまだまだ発展途上ですから、いつかもっと有名になったところでイキシアさんを出会いの場に誘って驚かしたいなって思っていたんです」


 俺は真剣な顔をしてさらに続けた。


 「母さんが亡くなって落ち込んでいた時にいつもイキシアさんは俺に話しかけてきてくれましたよね?」


 「そ、そうだったわね。べ、別にあなたのために話しかけたわけじゃないわよ」

 

 イキシアさんは少しクールさを欠いて答える。


 「わかってますよ。それでも、たとえ俺のためじゃなくても、俺にとってはありがたかったことなんです。だから本当にあの時は話しかけてくれてありがとうございました」


 俺が感謝の気持ちを込めて柔らかな視線を送ると、イキシアさんは一瞬体中の血がすべて集まったかのように頬を紅く染めたが、すぐにソッポを向いてしまう。


 「......何も分かってないじゃない」


 ボソっと何かを呟く。


 「ん? 何か言いましたか?」


 「別に? ただ感謝される程のことじゃないって言っただけだわよ」


 私はできる限り冷静そうに答える。


 「そ、そうですか......」


 葛篭はしょんぼりとした様子で下を向いてしまう。


 もう! そんなにしょんぼりしなくてもいいじゃない! これだからいつまでも鈍感な人は......


 ツンツンツンツンツン


 な、何よそんなにつついてきて......


 私の友達がニヤニヤしながらつついてくる。

 何事か聞こうとした矢先にいきなり右腕をピンッと伸ばして元気な声で


 「わたしはーー、ミーチューだったことを黙っていたつづっちに制裁が必要だと思いまーす!」


 いい終わると同時に私にウィンクしてくる。


 

 ・・・・・・!


 

 ふふふ、そうだわ、黙ってた葛篭には制裁が必要だわよね!


 「えっ! 制裁? 何だか嫌な予感しかしないんだけど」


 ふふふ、しょんぼりしてた葛篭がおどおどし始めたわ、なんてかわいいこと。


 でも何にしようかしら、やるからにはとびきりのやつが良いわよね......


 


 ......やばいやばいやばい

 

 イキシアさんのクールさが寒帯を超えてツンドラ気候あたりにまできている。何を命令されるかわからない。何としてもここから逃げなければならない。

 だから俺はこれを逃げる言い訳に使ってしまった。


 「きょ、今日は今から次の配信のための打ち合わせがあるのでもう帰りますね」


 「えっ? 午後の講義は? てか、さっき午後の講義の予習してたよねーー、もしかして嘘ついて逃げようとしてた? ん? ん? そうなんでしょ! 図星でしょー!」


 くっ! なかなか癪に障る言い方をしてくる。俺が何とか弁明しようと頭を回していたところに


 「それだわ......」


 ポツリと呟かれた声によって俺の周りに静寂が訪れる。


 ゴクン


 俺は思わず唾を飲み込んでしまった。


 イキシアさんの方から今までに感じたことないほどの冷気が漂ってくる。


 俺はゆっくりとイキシアさんと目を合わせると、彼女は


 獲物を仕留めるかのような残酷な目で俺を見ている。


 「決めたわ。あなたへの制裁はーーここで出会いの場配信をすることよ!」




 今日中にPV1000いってほしい!


 読んでくださった方本当にありがとうございます。


 しばらく甘々と重めの重点を置いて少しだけ過去を語ろうと思います。

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