ある過去の配信(銀髪留学生)編

第3話出会いはいろいろな所で繋がっている

 俺は東京にある有名な私立大学に通っている。


 学費が高いから本当は国公立大学に通いたかったが、皐月の――いや、俺たちの母さんが


 「せっかく日本で1番偏差値が高いところに受かったんだから行かなきゃ損よ!」


 俺は運良く私立大学の頂点に立つ○○大学の医学部に合格することができた。


 「お金のことは気にしちゃダメよ! どうしても気にするんだったら将来私のことを養ってちょうだい!」


 「そうだよ! お兄ちゃんもの一員なんだから、お金を気にしちゃメッ!」


 母さんと皐月の必死な説得を受けて俺はそれに屈して、この大学への入学を決意した。


 ――校門前の桜並木

 

 「......あ」


 風に飛ばされてきた桜の花びらが俺の髪の上にのってくる。

 俺はそれを右手でつまみ左手の手の平にのせた。


 「懐かしいなぁ......」


 桜の花びらが大切な記憶を運んで来た。


 「入学式からもう2年も経つのか......」


 入学式の日も今日と同じように生ぬるい風が桜の花びらを運んでいた。


 

+++

 「うわーーーすごく広いね......。お兄ちゃんは今日からここに通うんだ!」


 「うん、そうだよ」


 「楽しみ?」


 「もちろん! すごく楽しみだよ」


 俺は腕を伸ばし、皐月の頭を撫でる。皐月は今と同じように気持ちよさそうにして目を細める。


 ビュンッビュンッ


 俺と皐月の間を春にしてはやけに生ぬるい風が通り過ぎて行く。


 「ぷっ、お兄ちゃんの頭に桜がついてる」


 「あははは、皐月の頭にもついてるよ」


 お互いがお互いの髪についた桜の花びらをつまみ、手の平にのせ、見せてあげようと思って手を正面に持ってくる。


 「「あ」」


 お互いの手がぶつかる。その手はなぜか2人ともやけに熱い。


 お互いに顔を真っ赤にしながら見つめ合っていたところにもう一度生ぬるい風が吹き込んでくる。


 「「あ」」


 2つの花びらが寄り添うようにして風にのせられて、空へと消えていく。


 俺と皐月はしばらくの間それを眺めた。


 「葛篭、もう入学式始まっちゃうわよ。ほら急いで」


 母さんが俺をせかす。


 「皐月、しっかり俺のかっこいいスーツ姿を目に焼き付けておけよ!」


 俺は午前中にあった皐月の入学式に感激を受けて、いつになく調子がでている。


 「う、うん......ずっと見とく......」


 皐月の声はいつになく小さくて、下を向いているから顔はよく見えない。


 (それにしても......皐月の制服姿可愛いな......中学は制服だったもんね)


 お互いの見慣れない姿に2人ともドキドキしていた。


 俺と皐月を見る母さんの目はとても穏やかだった。


 

 +++

 校門の前の並木道を通り抜ける。校門の前あたりで


 「よっ! シスコン。昨日はしっかり妹に慰めてもらったか?」


 髪を金髪に染めたいかにもチャラそうな男が声をかけてくる。俺は忌々しそうに


 「楓(かえで)、昨日のツイートどういうことだよ」


 そう、俺が振られた疑惑がでているのはこの男のせい――だが


 「昨日、兄貴は少しぐらい役に立ったか?」


 「ふん、まだまだ働き足りないね」


 「ほぉーなかなかブラックやなー」


 結局はこの男の兄、檜(ひのき)がすべて悪い。


 奴が、皐月が俺に抱きついているところをスマホに収めて楓に流した。楓のツイートしたい欲求を止められる人はこの世にいない。だから楓に流したやつが悪い。


 「でもよー、ホント葛篭はよく兄貴を更生することができたよな。兄貴は図体でかいし、顔も怖いし、よくビビらなかったな」


 なんと檜は俺の配信で1番最初のだ。今でもあのインタビューは伝説に残っている。


 ヨーチューブで調べてみてほしい、多分


 「悲報、配信妨害をした巨漢男、」


 というタイトルの動画が1番上に出来ると思う。


 あっ、言うまでもないが、もちろんその動画を作ったのも弟の楓くん。


 彼のツイート力、いや拡散力の下では家族とか知り合いとかなんて関係ないらしい。

 

 今日はやけに昔を思い出す。


 懐かしいな、楓との最初のコンタクト。



 今から1年ともうちょっと前ある日

 俺が大学の食堂でいろいろな人に囲まれてご飯を食べていたら


 「うちの兄貴がすみませんでした!」


 いきなり長身金髪チャラ男が土下座してきた。まわりの人はドン引きし、


 「ちょっとアンタ、それ以上葛篭に近づいてみなさい! 承知しないわよ?」


 「ま、待ってくださいクーデ――おっほん、イキシアさん!」


 「こっちは危ないわ、葛篭はそこで座ってて、ここは私に任せなさい!」


 イキシアさんがとてもクールにのたまう。


 「えっ、あっ、はい......じゃなくて!」


 俺は一瞬そのクールさに乗せられかける。


 ちょっと、イキシアさん? そのスプレーは何? も、もしかして毒だったりしないよね?


 イキシアさんが謎のスプレーを手に持っておっしゃる。


 「今すぐそこから離れなさい、さもないと.....」



 ゴクリ


 


 「唐辛子スプレーをかけるわよ!」


 あっ、ならいいかな。


 

 ごめん、全然よくなかったよね、目に入ったら危ない。


 「はーーー」


 何かと俺は諍いの仲介役が多いなー。前はなんだっけ?


 ままいいや、今回は


 金髪長身チャラ男vsか......


 って、長いから略称するけど金チャって何も悪いことしてないよね? ただ土下座してるだけだよね?


 「はーーー」


 俺はもう一度ため息をついて仲介に向かうのだった。

 


 

 ・・・・・・を......に変えてみました。

 

 葛篭と皐月のやり取りって読者さんにとってはどうなんでしょうかね。

 私にとってはもうキュンキュンしちゃうものですね。

 たくさんのフォローありがとうございます。

 差し出がましいですが、

 ハートを押して頂けたら嬉しいです。

 では明日また会いましょう!

 

 

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