日曜の夜に読みたい小説。オトナになることに疲れた人たちへ
- ★★★ Excellent!!!
高校卒業後すぐに就職した主人公は、仕事に疲れて思い出の場所へ向かう……
読んで共感する方も多いのではないでしょうか。私もその一人です。主人公の心情や行動の一つ一つに「わかる!」ってなります。
実感がないまま時間だけが過ぎていき、少し休憩したくなる。責任とか自覚とかそういうものの重さにまだ慣れていない。
そんな人におすすめです。
とても丁寧に思考をたどる文章でした。焦るべきなのに焦れないような、「ちゃんとしなきゃ」という思いと楽観的な思考の静かな葛藤に引き込まれます。ところどころに挟まる印象的で独特な表現で臨場感が増していました。
一歩引いた目線で読むと、「ものすごくリアル」。現代の若者の傾向なのかもしれませんが、地域から切り離されて、新しい環境に行くたびに自分の居場所に困ってしまう。だから根無し草のようにふらっとどこかへ行きたくなる。それはわがままでも何でもなく、「自己防衛」なのだと。
「ちゃんとしなきゃ」と楽観的思考の葛藤は、社会になじむことと自分を守ることの葛藤でもあるのかもしれません。
とても考えさせられる小説であり、だれかの救いにもなりうる小説です。