第4話 生まれ変わり

(久々なのと、初めてだなぁ。シャークと一緒に戦闘に出るの)


 2ヶ月後、再び外の怪物を倒すため絶望の外に出た。絶望化としてもきっと生存者がいる可能性があるため、2ヶ月に1回は絶望の世界に行き、怪物を倒しながら生存者がいないかの確認。


 潜水士たちは、日によて場所が変わりながらその場にいる怪物を全滅させていた。


 そしてそれが今、行われようとしているのだった。陸軍と人外は車に乗ってそのまま外の入り口の方かた出ていき、潜水士と海の人外は建物の陸軍とは違う扉から絶望の世界にへと出られるようにしてある。


 地上で動けられる海の人外は水が出るマスクを付けて時々地上の方を参加する時がある。


 研究員の翔太たちは見送るために入り口の方で待機をしていた。

 

 もちろんその時もシャークとその他が泳ぎながら来ている。


「よし。それでは諸君。これからに出る。もちろん、皆、死なないよう健闘を祈る」


 リーダーの言葉に他の潜水士も頷いた。


 心臓が高くなるのは何度目だろうと思いながら外を見た。外の世界は完全に壊されていた。


 装備を整えると、潜水艦が絶望の世界が開かれる音が聞こえた。それぞれ皆口にレギュレーターを咥えると水の中に入って行った。


 水の中に入ると粉々になった船や岩があり、それに当たらないようにするとシャークが冬雪の腕を掴んで自分の体の上に乗らせた。


「あっ、ありがとう。シャーク」


 シャークは落とさないようにしながらで移動をしていると、怪物がいるという音が鳴り響いた。見ると、そこには尻尾に針。口にはゾロゾロとした歯をした怪物が次々と出てきた。


「撃て! 全滅させろ!」


 リーダーの言葉にその場にいた潜水士は銃を放った。その他の人外は化け物を早々と攻撃をした。


「シャーク! 前進だ!」


 冬雪の言葉にシャークは訓練の時と同じように早々と目の前の化け物を鋭い爪と尾びれで倒して行った。


 他の潜水士も人外に乗って化け物を倒した。


 冬雪も次々と来る化け物を銃で乱射した。


(今回は、凄い数だな)


 そう思っていると隣から一匹の怪物が尻尾についている針をシャークに向けて飛ばしてきた。


 冬雪は思わずにシャークを蹴飛ばして離れさせると、鋭い針が自分の胸に刺さる痛みが走った。


 自分の胸を見ると、針が突き刺さっている。


 シャークは自分が蹴飛ばされたことに何事かと思って振り向くと冬雪から血が流れているのが見えた。すぐに駆け寄り、針が刺さっていることを知ると見たことがないほど目を見開いた。


 その様子に仲間の人外がすぐに叫んだ。


「おい! みんな下がれ!」

「えっ!」


 銃を持った潜水士を他の人外は抱き抱えて離れた。


 離れていく間に怪物はシャークと冬雪の方に寄って行ったが尾びれで粉々にした。


 そして離れていた潜水士はその光景に察しをすると同時に、シャークの叫びが海全体に響き渡った。そして先ほどよりも猛スピードで周りの怪物を殺して行った。


 周りの人外はシャークの見たことないほどの素早さに結構な怒りをしているのだと感じた。


 その場にいた怪物はほとんどバラバラに破壊されていたがシャークの怒りは収まっていない。


「シャーク! お前そんなことをしている暇なんてねぇぞ! まずはお前の世話係を本部まで」


 人外の仲間の叫び声にシャークは我を帰ると猛スピードで本部に向かった。


 冬雪は大事に抱えられながも自分の意識が徐々に遠くなっていく感触を感じられた。


(やばいな、これで死んじゃうのか)


 自分が最後までミスを犯してしまったなと思いながらシャークを見た。シャークは必死の形相で本部に向かっている姿が見える。


(最後に迷惑を掛けるなんて、本当に、アホだな私)


 自分の失態に思わず笑みがこぼれてしまう。


(最後ぐらいは、彼にも少しぐらい、良い思い、させてもいいよね)

 

 冬雪はシャークの腕を軽く叩いた。シャークはその行動に一瞬止まった。その瞬間に針を引き抜き、ゴーグルとレギュレーターを外すと優しく彼に口付けをした。


 キスの行動にシャークは目を見開いたが冬雪は口を離すと優しく微笑んだ。


「あ、り、が、と」


 そういうと、目をゆっくり閉じて意識を閉じた。


 その表情に、シャークは歯軋りをすると再び強く抱きしめて本部の方に向かった。



 本部の方では翔太がソワソワしながら入り口で待っていた。先ほど潜水班から冬雪が怪物にやられたということを聞かされたからだ。


(冬雪。どうか無事でいてくれ)


 それを思っていると後ろから翔太と呼ぶ声が聞こえた。振り返ると勇翔とヨウとリュウがいた。


「お前ら。どうして」

「冬雪のことをさっき聞いたんだ。そしたら仲間が先に帰って良いって言ってくれて戻ってきたんだ。ちょうど目的の怪物は半分だったからさ。おまけに他の人外がほとんど殺してくれたおかげでな。それよりも冬雪がシャークを庇って重症を追ったのか?」


 勇翔が心配しながら言うと、翔太は小さく頷いた。


「でもシャークはメガドロンのDNAが入っているはずだから、刺されてもただ擦り傷みたいな感じじゃ」


 リュウはそう言うと、ヨウは「それがわかっても傷をつけたくなかったんだよ」と言った。


 4人は心臓をバクバクさせながらでいると水から這い上がる音が聞こえた。


「おいっ! 帰ってきたぞ」


 仲間の叫びに4人は水の方の入り口に走った。行くと、そこには明らかに意識がない冬雪を抱きしめているシャークの姿があった。


 4人はその姿になんとも言えない感情が広がっていた。仲間の死とシャークの落ち込みの姿に息を呑んだ。


「シャーク」


 ヨウが声を掛けると、シャークは冬雪を少しだけ強く抱きしめ直した。


「……シャーク。冬雪をこっちに」


 翔太がそう言うと、鳴き声を上げて鋭い歯を見せながら渡さないという勢いを見せながら威嚇をした。


 その行動に翔太は唇を噛み締めた。


「わかるよ。だけど、お前だって冬雪の姿を見てわかるだろ。もぉ、そいつは、死んじまってんだよ。もぉ」


 翔太は自分の声が震えているのがわかる。おまけに目が熱くなって涙がこぼれてきそうになる。3人も同じだった。


 目の前の光景に目から涙が出そうになる。


「だから、だから」


 翔太が言いかけると。


「あっ、あれ?」


 冬雪の声にその場にいた皆は空耳かと感じたが、「シャーク?」と呼ぶ声にシャークは自分の体から離して冬雪の顔を確認した。


 そのことにシャークは驚愕の顔をした。それもそのはず。今目の前で刺されたはずの冬雪が生きているからだ。


 皆は何が起こっているんだと騒いだ。


「えっ? 冬雪お前、刺されたんじゃないの?」


 リュウは冬雪が起きていることに驚愕が隠しきれないでいた。


「えっ。えっ。なんで?」

「私もわからないよ。なんで自分が生きているのか。それに、傷だって治ってんだからさ」


 冬雪はそう言いながら振り返った。顔を見た4人とその場の皆は顔を見て再びざわついた。


「冬雪、お前その目どうしたんだよ。それに首元の傷も」

「えっ? 私、何か変?」


 冬雪の言葉に勇翔は「あぁ」と言った。


「ほら。鏡を見てみろよ」


 そう良いながら手鏡を渡した。受け取り、鏡を見た。


 鏡に映った自分の瞳は水色に染まっていた。おまけに首には三つの傷があった。まるでそれは魚のエラのようにも見えた。


「一体何が起こってんだよ。目の白いところは黒じゃないけど、まるでシャークみたいな感じじゃねぇか」


 ヨウの言葉に冬雪はハッとした。


「シャーク! 私を水の中に入れて! 早く」


 シャークはこの状況に何がなんだかわからないでいたが、すぐに言われた通りに抱き抱えて水の中に入った。


 冬雪はボンぺやシュノーケルを口に含まずゆっくりと目を開けた。

 

 目の前にはシャークの顔が綺麗に映っている。おまけに海の中に入っても苦しくも感じられない。むしろ、地上のような感じがしてとても楽だった。


 思わず「あっ」と声を出してみるとそれも地上と同じ感じ。そのことに冬雪は笑みがこぼれた。


「シャーク、私、私、あなたと同じ人外に生まれ変わった!」


 冬雪が笑顔で言うとシャークは見たことがないほどの笑みを浮かべさせるとお互いに強く抱きしめた。


 そんな中、地上の方では冬雪が生き返ったことに歓声の喜びの声を上げていた。



 あのことから一年後、あの日、冬雪が生き返ったことが街と軍隊内で瞬く間に広がり、一体どうしてだと言う話で盛り上がっていた。


 生き返った後はすぐに検査をした。なぜ生き返ったのかは予測だが、何かのきっかけでシャークのDNAが冬雪の体内に入り込み、生まれ変わりとして生き返ったのだろうと考えた。


 勿論母親にもこのことを伝え、自分の姿を見せた。


 母親は驚きながらも涙を流し、生きててよかったと何回も言い、強く抱きしめた。そして何度もシャークに頭を下げてお礼を言った。


 その後、冬雪は地上を歩き回っている海の人外と同じく水を2時間以内に時々飲みながら生活をするようになった。おまけに部屋も変わり、眠る時も水の中になった。寝る時の感覚は全て地上と同じ。


 廊下を歩きながら水を飲んでいると翔太と勇翔、そして人外部隊のリョウやヨウと会った。


「ヤッホ。冬雪。体調大丈夫か? 水もしっかりと飲んでいるか?」


 翔太は心配そうにしながら話した。


「体調も視力も水も万全よ。ほら、そばにあるでしょ」


 冬雪はそばにある水が入っているコロコロタンクを見せた。


「おっ。それなら大丈夫だな。部屋もどうだ? お前、海の人外になったから水の中で眠るだろ」


 勇翔の質問に冬雪は「とても快適だよ」と笑顔で言った。


「それならよかったねぇ。あっ、でもそろそろ遊ぶ時間じゃない?」


 リョウの言葉にヨウも「そうだな」と言った。


「そろそろ。あいつも遊びたくなるんじゃないのか? 今日は特訓休みだし」


 ヨウの言葉に、冬雪は時計を見た。


「やばっ。そうだね。ありがとう。教えてくれて。それじゃあね」


 笑顔で言うと、コロコロタンクを持って駆け足でシャークの所に向かった。


「冬雪のやつ結構変わったよな。あいつシャークと会ってから」


 翔太は後ろ姿を眺めながら言った。


「あぁ、でも良いじゃないか。あいつらが幸せなら」


 勇翔の言葉に人外の2人もうんうんと頷いた。


 

 冬雪は部屋に着くと、シャークは待っていましたと言わんばかりの笑みを見せながら声を出した。


「ギャッ。ギャッ」

「待ってて。今行くからさ」


 シャークは冬雪が一緒の人外になったのがそれほど嬉しいのか最近は声を出し始めて行った。


 タンクを置くと、駆け足でシャークの方に笑顔で飛び込むと抱きしめられたまま底まで泳いで遊びの部屋に向かった。


 苦しくもない水の中を泳ぎながら冬雪はシャークを見た。


 この世界のいる怪物を殺しても元凶を殺さない限り増えていくのは確実だ。おまけにこの建物も壊されてしまうのではないかの不安もある。そんな中、戦いながらもいつかは原型がとどめないぐらいの殺されたらシャークだって生き返らないかもしれない。


 だけど、どんな未来でも構わない。彼と永遠に一緒にいられるならそれでも良い。


 冬雪はもう一度シャークを見た。シャークは冬雪が見つめていることに気がつくと、泳ぐのをやめてどうしたのかと言わんばかりに冬雪の頬を触った。


 冬雪は何も言えなくなり、強く抱きしめながら神と言うものに願った。


(神様。どうか、彼と永遠にいられますように)




▲△

最後まで読んでくださりありがといございます。

本作はカドカワ甲子園2023のロングストーリに似て応募をしています。もしよろしければ応援&レビュー、感想をよろしくお願いします。



 

 


 


 



 

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絶望の世界で貴方と永遠に 羊丸 @hitsuji29

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