絶望の世界で貴方と永遠に

羊丸

第1話 世話かがり相手

 世界はある日、怪物によって侵略をされた。人間たちは身を安全にするために強化な建物の中に住んでいる。


 強化な建物、化け物に見つからないようにその場に馴染むかのような建物を作り出した。内側には普通の日常のように店、学校、家を建てている。


 外は強力なプラスチック製のやつで覆われ、その上には飛んでいる化け物から見つからにように自然に馴染むかのように細工されているため、外からは何も見られない状態だった。


 外側に行けば怪物たちがウヨウヨとしている。それを削除するために日々、軍隊たちは日々訓練をし、怪物たちを倒してはそのほかに生存者がいないかを確認している。


 そんな中、訓練を終えた太田冬雪ゆきは短い髪を耳に掛けながら廊下を歩いている。


「おっ! 特訓し終わったか? 冬雪」


 後ろから声をかけられ、振り向くと茶色の髪をし、白衣を着た研究員の翔太がいた。


 「うん」と元気よく返事をした。


「相川ず元気な返事だなお前は」


 後ろから声がし、振り返ると陸軍の勇翔ゆうひがいた。


「まぁね。でもこう見えて結構疲れています」

「ははは、いいことだ!」と勇翔


 話していると後ろから「そうだねー」と声が聞こえた。振り向くと、何本かの鋭い足。そして鎌のような腕をし、軍服を着ているリュウという名の人外部隊がいた。


 翔太は「お前いつの間に!」と驚きの声を出していた。


「だって、翔太俺をどっかに置いて行くんだもん。俺の世話係なのに〜」


 リュウは何本かの足でバタつかせながら文句を言った。


「うるさいな。確かにそうだけど、お前って時々1人になりたいっていう気持ちがありそうだし」

「ないない! むしろ俺は翔太と一緒がいいの!」


 その光景を見て冬雪は「仲良しね」と笑顔で言うと、勇翔も同情するかのように「そうだな」と笑顔で答えると突然彼が浮き上がった。


 なんだろうと振り返ると揚げた持ち主の姿に再び笑みが溢れてしまった。彼が浮き上がったのではない。ただ持ち上げられたのだ。


 持ち上げたのは鋭い爪を伸ばし、長い緑しっぽをズボンの後ろから出しているヨウだった。


「おいっ! ヨウ。急に持ち上げるな! びっくりするだろうが」

「イイだろ別に。それよりも早く遊ぼうぜぇ」

「後でだ!」


 じゃれつく光景に冬雪は思わず笑みが溢れた。


 今目の前にいるのは特殊人外部隊。なぜこの人外部隊がいる理由は怪物と一緒に戦うためだった。


 これ以上犠牲者を増やさないために、軍隊に入った時は死んだ時も戦いたいという気持ちを持った人物に様々な最強の虫、魚、動物のDNAを組み合わせて生き返らせるという方法を研究員が開発をしたのだった。


 最初はそんなの成功は絶対しないと思ったのと、何しろ死んだ人間を研究としての材料として使っているように見えて、冬雪はなんだか嫌だなと思ったが、成功をしたおかげなのかこれが意外と評判が良かった。


 死んだ軍隊の中には家族だっているため、家族では息子や娘がどんな姿であろうと生き返ってくれればそれでいいという人物がいた。


 冬雪は自分がもし子供がいたらの場合も考えてみた。確かに自分の子供が死んだからこれで生き返ってくれれば嬉しいなと考えた。


 今はこのことにあまり偏見の言葉なんて無くなった。

 

 リョウとヨウもその中の2人で、一度だけ怪物にやられて死んだがこのような形で生まれ変わったのだった。


 リュウはクモとオオカマキリのDNAで両手は鋭くなり、足は8本生えた。ヨウはコモドオオトカゲのDNAを入れると、体は黒くなり、おまけに鋭い爪まで生やした。


 そして、なぜリュウが言う世話係というのは、人外部隊の世話係。つまり、何かあった時に対応をする人。選ばれるのは成績がいいものだけが人外の世話係として上から任命をされる。


 ほとんどの人外たちは懐いてはいるが、生まれ変わったとしても一つだけ欠点がある。


 それは言葉の発達だった。人外の中には言葉の発達が悪いのもいればリュウみたいな感じでいつも通りの発達ができる人外がいる。


 発達ができない人外はノートで文字を書いたりはするが、漢字の書き方は忘れてしまったのか全てひらがな。だが、なぜだか人間との言葉が交わせなくても、人外との話は通じ合えるため、万が一に紙がなかったら話せる人外から本略をするように指示をするらしい。


「ところで翔太。リュウは今の所健康体とか大丈夫」

「えっ。あぁ、この通りピンピンよ。もぉ怪物なんでペシャンコだっての」

「ははは、さすがだな。お互いに」


 冬雪の褒め言葉にリュウやヨウは「えへへ」と笑顔で言った。


「あっ。言い伝え忘れたことがあった」

「えっ? 何」

「実は、大将さんがお前のことを呼んでた」

「えっ! 無線機からそんなの一度も」

「あぁ、俺がちょうど大将と話していたから任されたから」

「わかった。教えてくれてありがとうね」


 冬雪は翔太にお礼の言葉を言うと、駆け足で大将の部屋に向かった。


 部屋の前に行くと身なりを整えて、変なところがないかを確認すると扉を3回ノックした。


「潜水士の冬雪です」

「入りたまえ」


 失礼しますと言いながら扉を開けた。目の前には軍服をビシッと整えた大将の山内秀雄ひでおがいた。


「大将。何か御用でありますか」

「あぁ、早速だが俺がお前を呼んだのはだな、人外部隊の世話係になってもらうために呼んだ」


 秀雄の言葉に冬雪は一瞬だけ思考が停止した。


「えっ。人外部隊の、お世話係、ですか?」

「あぁ、そうだ」

「なるほ、えぇぇぇぇぇぇ!」


 あまりのことに冬雪は驚きの声を出した。


「わっ、私が人外の世話にですか!!!」

「そうだ。なぜそんなに驚いている」

「いや、だって私あまり、人外に関する知識はあまりないですし、それに成績だってあまり」

「いや、おまえさんは中々訓練の中では優秀に近い人物だ。人外に関する知識はこれから勉強をしていけばいいことだ」

「確かにそうですけど、ですがなぜ私が。他の大半の潜水士も成績は訓練の成績は沢山いるじゃあありませんか」


 冬雪は疑問の質問をした。


「その人外なのだが、ほとんどの潜水士が彼の過去などで怖がるんだ。おまけにその人外は無愛想なのと人見知りをしているらしい」

「そうですか、でも、私で良いのでしょうか」

「自信を持ちたまえ。人外の世話係に任命をされるなんてそう簡単なことではないのだぞ。おまけに任命されるということは成績が良いという証拠だ」


 大将が励ましの言葉をかけたが冬雪は不安が残る中だ。だが、上の命令だから仕方がないと言うこともあり、冬雪は「わかりました」と返事をした。


「ありがとう。冬雪潜水士。それで会う日なんだが明日にしてくれたまえ。今日は色々と訓練をしていただろうから休みたまえ。それじゃあ、彼に関する内容はこれに載っている。一日で頭の中に叩き込んでくれると嬉しい。それから服装はいつもの潜水服でだ」


 和雄はそういうと、デスクの上に置かれていた資料を冬雪にわたした。


「あっ。ありがとうございます」

「あぁ、そろそろ食事の時間が来るだろう」


 和雄がそういう同時に食事の時間というアナウンスが流れた。冬雪は和雄にお礼の言葉を言うと食堂室に向かった。


 食堂室に行くと、様々な部隊の人や研究員、人外たちがいる。


 食堂室には人外用の食堂と人間の食堂と別れているだけであり、席などは離れ離れにはなっていない。

 

 ただし、海の人外の世話係以外の人と人外、2時間の間で水を繰り返し飲むことで自由に地上を歩ける人外は必ず一緒の席で食事をしなければならないと言うルールがある。


 お盆の上に食べれる分だけ乗せ、いつも通り好きなところに座って食べようとしたが、最初にあの封筒をもう一度見た。


(引き受けたとはいえ、初めての重大任務を任されたきがする)


 冬雪はため息をつくと


「冬雪ー。一緒に食べていいか?」


 見上げると翔太とリュウ、そして勇翔とヨウもいた。


「えぇ。構わないわ」


 冬雪はそう言うと二人は隣の席に座った。


「ん? これなんだ?」


 ヨウは鋭い爪で資料を掴んだ。


「あぁ、これはダメよ。大事な資料なのだから」

「資料? 何か任されたのか?」


 勇翔の質問に冬雪は「明日から人外のお世話係になるのよ」と言った。


「あぁ、人外のおせ、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!」と翔太

「なるほど。人外の、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!」と勇翔


 二人は冬雪の言葉に驚きの声を出した。食堂にいた人と人外は何事だと思いながら肩をビクつかせたり、食事を喉に詰まらせそうになった子もいた。


「おまっ、それ本当かよ」

「うん。本当。だから、ご飯食べたら早めに寝るわ。明日のためにもしっかりとしなくちゃね」


 冬雪は翔太の質問に答えながらご飯を食べ続けた。


「人外のお世話ってことだと、冬雪は潜水士だし、きっとシャークのことかもねぇ」


 リュウは肉を摘み、口の中に入れて答えた。


「シャーク? それが私の人外のお世話相手ってこと?」


 リュウが言った名前の人物に冬雪は質問をした。


「うん。きっとそうだと思うよ。何せ、あいつにはまだ世話係の相手がいないって言っていたし。おまけに怖がれられているしねぇ」

「なんで?」


 冬雪はそう言うと、リュウは資料を指差した。


「そこに彼が人間だった頃が書かれているから確認して見て」


 リュウはそう言うと肉を食べ続けた。冬雪は資料の中がますます気になり、早めにご飯を食べ終えると自分の部屋に戻った。


 部屋に戻ると資料を置き、最初に風呂に入った。しっかりと一日の汚れを落とした。潜水服は二着あり、一日で着た服は洗濯する用のカゴの中に入れ、それを廊下に置くだけで服を洗ってくれる係の人が持って洗濯をし、それを再び部屋の前に置いてくる。もちろん時間制限があり、24時までに置かなければ洗濯はされないのだそうだ。


 普通の私服は自分で洗濯をするようにしている。おまけに洗濯機の洗剤は無料で送られるためありがたいことだった。


 一日の汚れを落とすと早々と自分が来ていた潜水服を廊下に置いた。


 私服に着替え、早速渡された資料の内容を見た。確かにリュウが言った通り相手はシャーク。写真には顔全体に傷が数箇所あり、両頬は口裂け女と同じように裂け、それを針で塗られている。眼球の白いところは黒に塗りつぶされており、真ん中の目は水色になっている。


 写真の横には喋ることが不得意だそうだ。彼は人外になってから喋るのが不得意になったんだろうと冬雪は思った。


 彼もわずか数人の海の人外が水を二時間以内に飲むことを繰り返すことができたら地上を歩き回れることができるらしい。


 そして腕と足だけが灰色になっており、胸あたりは普通に人の肌になっている。お尻から灰色の尾鰭が出ており、地上に出ると徐々に縮み、海に入ると元の大きさに戻るということだ。


 シャークは、3ヶ月前に他の潜水士が戦闘を終えた後に見つけたメガドロンのDNAをを混ぜているため、たとえ刺されても簡単に死なないと言うことだった。


 身長は約1メートル。口は鋭い牙がずらりと並んでいた。


 冬雪は一通り確認をすると、彼の人間だった頃に関する内容が書かれていた。


(あった)


 見てみると、彼は人間の頃はテロ組織を襲撃する部隊に入っていた。だが、何回も捕まえては逃げ出そうとするテロの足の骨を折り、おまけに躊躇なく鼻の骨などを折る行為をしていた。


 そのせいで、人を簡単に拷問をする悪魔とあだ名が付けられ人から避けられていた。おまけに上の方にも気味悪がられていた。


 けど、彼がこうゆうことをする理由もある。


(両親が、テロに殺された!?)


 両親はまだシャークが中学生の頃、テロ組織に店の中をジャックされ、逃げる際に一人のテロがショットガンで巻き込まれて殺されてしまったらしい。


 両親は一人息子を守るために盾になってくれたらしい。


(こんな過去があったらなおさらテロに恨みがあるけど、あれ?)


 冬雪は色々と見てみたが、どこにもテロを殺したというケースがない。あるのは逃げられないようにする程度の怪我を負わせているだけだが書かれていた。


(すごい、ただ怪我を負わせるだけだなんて。過去でそういうのに似た人物を殺してしまう人が沢山いるはずだけど、それをしないなんてむしろいいことじゃない。なのに変に悪魔なんてあだ名つけられるなんて)


 冬雪はこの人外の内容を見てとても気の毒に感じられたのだった。

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