エピローグ 2 

「やあやあ、みんな焼けたねえ。――あれ? 鈴代さんはあまり焼けてない? 瀬川くんがお出かけに連れてってくれなかったのかな? 私、こんなに焼けちゃいまして!」


 二学期が始まり、いつものように二人で登校すると、朝の教室で長瀬さんが絡んできた。


「どうしたの?」――と渚に聞いてみる。

「わかんない」


「あっ、そうそう! みんな、そろそろ私、いいんじゃないかなって思ってたんだよ!」

「何? いったい」


 渚の前の席の鈴音ちゃんが長瀬さんに訝し気に問う。


「むふ~ん、クラスの禁忌タブー。あれ、そろそろ無くしてもいいんじゃないかなって。あ、ううん、私はあった方がいいと思うんだよ? 爛れた生活なんてよくないと思うし? だけどほらほら、もうクラスで恋人居ない子の方が少数派じゃないかな?――って」


 教壇で熱弁を振るっている長瀬さん。何を今更……。

 すると前の席の相馬が――。


「(長瀬さん、彼氏ができたみたいだよ)」

「(ああ、それで……)」


 まあ何にせよ、よかったんじゃないかな。と、そこに――。


「そうね、確かに少数派ね!」


 腕を組み、首を傾げて顎を上げ気味に長瀬さんへそう言い放ったのは新崎さん。

 それまで長瀬さんとしては同じ抵抗派だったかもしれない新崎さんの抵抗にあう。

 いや、それはそうだろう。本人としても後ろ盾のつもりだったはずだし。


「えっ、いや、そう……やっぱナシナシ……かな……」


 慌てて否定する長瀬さん。


「新崎……」――と相馬のうんざりした声。だが――。


「麻衣、私は構わないわよ? タブー撤廃に賛成」


 ちょうど登校してきた奥村さんがそう告げた。


「ん……百合がいいなら私も賛成よ」

「私も、百合さんがよいのでしたら賛成です」


 こうして、彼氏いない女子三大巨頭の賛成により、我がA組のタブーは撤廃されたのであった。もちろんここで話が終わりはしない。



「おはようございます、太一さん」


 奥村さんが後ろの席に着く手前で僕に声を掛けた、その一言により、再びA組は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなったのだ。事情を知るはずの渚と七虹香はニコニコ笑顔。


 渚からは、奥村さんにもう少しの間だけ優しくしてあげて――と頼まれた。まだ僕らは若い。この先の事なんかわからない。奥村さんも僕らと楽しく接している内に、何かが変わるかもしれないからと。ただ、心残りだけはさせたくないと言った。


 七虹香は何故だか奥村さんとすごく仲良くなった……それも気持ち悪いくらいに。何の話をしているのか、こそこそと小声で話したり、盛り上がって黄色い声を上げたりは旅行中も何度か見た。奥村さんが元気になったのは良いのだが……。



 奥村さんは両手を後ろ手に組み上体を傾け、安定した体幹で僕の首筋に顔をやると、教室は一瞬で静まり返る。背後は壁で僕も逃げ場がない。


 スッ――と匂いを嗅いだ動作は、或いはキスしたように見えたかもしれない。


「今日も体調はよさそうですね」


「お、おはよう、お――」

「百合です」


「百合さん……」


 あれから一年。高校二年生の二学期は、去年よりも波乱の二学期となりそうだった。



『僕の彼女は押しに弱い』 完







--

 これにて本作、エクストラステージも含めて完結となります。

 ここまでついてきてくださった読者の皆様、応援ありがとうございました!


 最後、なんかもう長くなり過ぎてついてきてくださってる方、かなり減ったんじゃないかとも思いますが、最後まで応援してくださった皆様には励ましていただきました。感謝しかございません。本当にありがとうございました!


 本作のコンセプトは――寝取られモノに対する抵抗!――みたいなものですかね。しかもどちらかというとエロ同人的な安易な展開に対するもので、渚の行動と太一の選択はいずれも、寝取らせはしないという強い意志により可能な限りの最善を尽くしています。尽くしすぎて話が成立しなかったエピソードがいくつかあるくらいです。


 渚は体力のない、だけどすごく性欲の強い文学少女です。太一が心配したように、本人が最大限の努力をしなければ容易に間男たちに落とされていた事でしょう。しかも太一が育てた結果、体力がついて余計に性欲が強くなりました。


 太一も太一で自信のない少年でした。そのままでは渚が寝取られるのを指を咥えて見てるだけたったかもしれません。が、こちらは渚によって自信を身に着け、最善を尽くすことができるようになりました。最終的に、読者の『行動しろ!』という声を可能な限り実現できるようなキャラクターに成長したと思います。


 渚の太一への願いは、最初から最後まで本作のキャッチコピー『わたしはあなたのものだから』に集約されています。これを太一が理解するのが十二章 第86話ですね。ここが実質的な最終回となります。もちろん、蛇足大好きな作者ですので章自体の最終回は10話ほど先ですが。


 太一と渚の物語はたぶんまだ続いていきますが、流石に長すぎて読む方もダレてしまうと思いますので、ここから先はこれまでたくさんのギフトで応援してくださったサポーター様への恩返しを含め、限定コンテンツで短編をお送りしようかと思います。内容は本編中の裏話に始まり、後日譚など、たぶん時系列順にはできないと思います。なお、限定コンテンツも2週間で公開予定ですので、無理に課金することなく読めると思います。


 気になる奥村さんとの話もちょこちょこ出して、決着まで書けたらなとは思います。あと坂浪さんの『むふぉ』とかでしょうか。他作品を書きながらになるかとは思います。


 ここまでお付き合いいただき、また本作に巡り合っていただきありがとうございました!

 皆様のweb小説ライフに幸あらんことを!







僕の彼女は押しに弱い 短編集

https://kakuyomu.jp/works/16818093074829774591




 謝辞


 本作を書き上げるに当たり、特に執筆を支えてくださった皆様に感謝申し上げます!


 @Platinam2022 様 初コメ&初レビューありがとうございました! あのコメントとレビューが無ければ二章書いてなかった可能性さえありますし、エロシーンに力を入れることもなかったと思います。また最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました!


 @ggggg5 様 初期の章をたくさんの応援コメントで支えて頂きありがとうございました! おかげさまでここまで続けることができました!


 亖緒 様 全編を通してたくさんのコメント、そして私の『自作を語り合いたい』なんて無茶な望みを叶えて頂きありがとうございました! レビューも頂きありがとうございます! 本作の特徴を上手く表現してくださったキャッチが嬉しかったです! また、太一と渚(のオルトキャラ?)を自作品に登場させていただきありがとうございますw


 @Miyaichi4510mi381 様 いつも親しみの篭ったたくさんのコメントをいただきありがとうございます。また、サポーターとしても執筆活動を支えて頂きありがとうございました! 今の時点で体調を崩されておられることがとても残念ですが、早く元気になって、またコメントください。当時のノリでコメレスさせていただきますので!


 はるをと 様 毎回ノリのいいツッコミありがとうございます! アカウントが消えてしまいましたので、楽しいコメントも消えてしまったのが残念ですが、せめてこちらでお礼だけでもさせてください。ありがとうございました!


 @genta58 様 レビューありがとうございました! スナック感覚の軽い文章でしたが、上手いと言って頂き嬉しかったです!


 @RYUGY 様 本作だけでなく、拙作のいくつもの作品にレビュー頂きありがとうございました! 一覧表示にキャッチが二つ表示されるのは今でも嬉しいです!


 その他、たくさんの皆さまの応援コメントのおかげで頑張ることができました。

 本作、めちゃくちゃコメント量が多いと驚かれたこともありますが、コメントは私の宝物です! ありがとうございました!



 また、カクヨムに課金してまでサポーターとして執筆活動を支えてくださった皆様にも感謝申し上げます。ありがとうございました!


 @kkmm798 様 拙作全般の執筆活動を応援していただきありがとうございます! 初めてのサポーター様で、まさかのギフトを受け取ったときはどうしていいかわからずあたふたしたものですw また、たくさんの追加ギフトや復縁モノのご紹介、本当にありがとうございました!


 @Tamakisan 様 本作の応援かはわかりませんでしたが、サポーターとして支えて頂きありがとうございました!


 @momoiro39 様 本作のファンと言ってくださり、ありがとうございます! 平和なお話がお好みのようですので、今後の短編集もお楽しみいただけるかと思います!


 @romeyasha 様 本作経由でのサポーター登録、そして応援ありがとうございました!


 @wamwam 様 同じく本作経由でのサポーター登録、そして応援ありがとうございました!


 @Miyaichi4510mi381 様 重複いたしますが、サポーターとしても拙作全般の執筆活動を応援していただきありがとうございました! いろんな作品を読んで頂けて嬉しかったです!


 KazN 様 拙作全般の執筆活動を応援していただきありがとうございます! 他の作品の執筆もちょっとずつ進めたいと思っております。


 @nisunisu 様 本作の応援かはわかりませんでしたが、サポーターとして支えて頂きありがとうございました!


 @nvkyuser 様 『恋離』から拙作を読み始めて頂き、拙作全般の執筆活動を応援していただきありがとうございます! また、いろいろなおススメ作品をご紹介くださりありがとうございました!


 @take570707 様 『聖女』と『勇者』というかなりレアな好みから拙作に入って頂きありがとうございます! 本作執筆中のサポーターとして支えて頂きありがとうございました!


 @heatsince 様 本作経由でのサポーター登録、そして応援ありがとうございました!


 @ken1021 様 本作の応援かはわかりませんでしたが、サポーターとして支えて頂きありがとうございました!


 @lemuever17 様 初期に本作を好きと言って頂き、本当にありがとうございました! サポーターとしても応援いただきありがとうございました!


 その他、たくさんの読者様のおかげで本作、エクストラステージの完結にこぎつけました。ありがとうございました!


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