そっと触れるぬくもりに生きた心地がしました。いつか見たいな茶筅梅

 ある種の痛みを経験した人にとって、心はあってないようなものといいますか、そよ風や波のようにあったりなかったりするもの、むしろ夢のように儚いものではないか、と思います。

 心躍るエンターテインメントも好きだけれども、今はちょっと疲れたな、一息つきたい。そんな凪のときにもふらっと立ち寄りたくなるような、優しい世界。俳句にはそういった不思議な魅力があるように思います。この作品もまさにそんな優しい響きをもっていました。

 作者様の描く世界はどこか詩的情緒を帯びていて、かといってことさら刺激的になりすぎない。きっと偶然通りすがった読者に対する作者様の優しさなのだろうと私は思いました(全然違うということもあるでしょう)。

 遠い時間、彼方の世界、郷愁。

 作者様が人生で触れてきたであろうさまざまの美しいものを、あくまで客観的に、実感をもって、彼女なりの視線で切り取り、心で描いている。
 
 そんな彼女の描く世界を眺めているうち『あれ、私ちゃんと生きてたんだな』というような笑。そんな自分の魂の輪郭まで間接的にそっと照らしてくれるような優しい響きと、人生の悲喜交々をそっと包み込んでくれるような不思議な温かさ。そんな素敵な世界がたしかにそこに在りました。

 
 実を言いますと、私はふだん俳句をまったく詠まないのですが、読むのは好きで、その魅力を知ったのはもう紛れもなくカクヨムに登録してから。それまでは学校の授業で触れたきりでした。

 そんな自分にとっては少し敷居が高い(かもしれない)世界を、日々どこかで誰かが綴っている。

 偶然覗いてみれば、そこには何の知識もない自分でも楽しめるような、あるいはコメントする余裕がないようなときでもふらっと立ち寄りたくなるような、自由で優しい世界が広がっている。

 そんな発見をするたびにWeb小説やっていて良かったなと思うのですが、本作品はまさにそんな新たな発見の一つ、嬉しい出会いでした。

 まだ拝読途中ではありますが、これからも此処が安心して創作出来る場所、そして誰に対しても開かれた世界であることを願いつつ、レビューとさせていただきます。

 素敵な作品をありがとうございました。また、おじゃまさせていただきます~✴️