(11)花と蝶

しばらくたったある日。

今日は、また父は外の仕事で留守だ。


今日は悠真さんが店番をしている。

僕は学校からの帰宅が楽しみで胸が躍る。


あの事件後、僕のクラスがどうなったのかというと、羽鳥がいなくなっても何も変わらなかった。

特にいじめが再開されるわけでもなく、アツシは何ひとつ変わることなく僕に接してくれた。


「ユウ。オレも佐藤先輩と付き合う事になったよ。積極的に行ったら一発でオッケーだったよ」


アツシは僕だけに聞こえるようにひっそりと、でも興奮気味に言った。


「それは、おめでとう。アツシ」


僕も、アツシの耳元でささやいた。


「あの胸板を触って愛撫できるかと思うと気持ちが高鳴ってくるよ。ふふふ。ところで、ユウ。この間言っていたバイトの人とは最近はどうなんだ?」


アツシは、僕に尋ねた。





僕が帰宅すると、悠真さんは常連の奥様の接客中だった。


「お帰りユウ。その辺で待っててよ」


僕は、はーい、と答えると常連さんに挨拶とお礼を言った。

悠真さんはお客さんを店の前で送り出すと、


「ありがとうございました。またよろしくお願いします」


と深々と頭をさげた。

そして、店の引き戸を締め、鍵をかけ、「休憩中」の札を掲げた。


僕は、そんな悠真さんを後ろから抱き着いた。


「悠真さん、僕はもう待てないよ」


ちょっと甘えた声になったかもしれない。

悠真さんはそれに答え、


「俺も、朝からユウの事を考えてずっと固くなりっぱなしだ。ほら」


と、僕の手を悠真さんの大きくなったものにいざなった。

固い。とても固い。

僕を愛してくれている証拠。


「今夜は、ナギさんと3人でする日だけど……」


悠真さんは僕の手を握り言った。


「今は、2人だけだから、男の子の格好のままでしちゃおうか?」


そう言って、制服姿の僕を抱き寄せた。


「うん……」


と、言いかけた僕の口には、すでに悠真さんの舌が僕の舌に絡みついていて、最後まで答えることができなかった。



幸せで幸せで仕方ない。

そんな、ある日の出来事。




※あふれ出す花の匂い 終

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あふれ出す花の匂い いちみりヒビキ @shirakawa_hibiki

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