第二十七話 日中戦争(8)中国共産党の窮乏

 中華民国政府と国民党は、開戦以来敗北を重ね劣勢が続いているが、開戦の原因を生み出したはどのような状態に置かれているのだろうか。


 の成立に伴い、中国共産党は実効支配下に置いていたし中華民国政府下の組織へ改変、国民党と共に国難に赴くと掲げ政府の指揮下に入った。


 党が有していたも国民革命軍に改変されており、中国共産党は中華民国に吸収され名ばかりの状態になっていた。


 旧紅軍は、として日満両国の占領地域内で破壊活動やゲリラ戦などを行っており、実際に日満両軍と対峙する中国軍よりかは比較的簡単な任務であると思われていた。


 しかし、準戦時体制を構築した日本と戦争特需に沸く満州王国の膨大な物資により、ゲリラ戦において一番重要な現地住民の支持を得ることができず、特に八路軍は1938年になることにはほぼ壊滅状態に陥っており、流石の共産党もゲリラ活動を低調にせざるを得なくなっていた。


 中華民国の劣勢を理解していた共産党は、ソビエト連邦に更なる支援を要請していたがそれにも限度があり、現在の劣勢を早期に覆すことは事実上不可能と見られていた。


 そんな中、1938年1月11日に日満連合軍がに成功、翌日には本土で猛訓練に励んでいた第二海兵師団が旧イギリス租借地である威海に上陸したことで山東半島内の中国軍は総崩れとなり、日満連合軍は初期目標である山東半島包囲と殲滅に成功した。


 その後、日満連合軍は、急速に北上している中華派遣軍と合流する為にへと進軍、大胆に中国軍へ攻撃を加えることで敵兵力の吸引しようと試みた。


 この作戦はある程度成功、機械化された師団で軍が構成されていることを生かし徐州の包囲を試みたが、中国軍の抵抗により包囲は失敗した。両軍は、第一工兵師団による撤退路の破壊工作や中華派遣航空軍による空襲などで多くの中国軍を壊滅させることには成功したが、幾らかの有力部隊の脱出を許してしまった。


 それでも、2月16日に日満連合軍司令官岡村寧次おかむらやすじ中将と中華派遣軍司令官松井石根まついいわね大将が揃ってを行い無事徐州攻略に成功した。


 その後、大陸奥地へと撤退していく中国軍残存部隊を追う形で両軍は追撃戦を実施、蘭封の戦いによって蘭封占領には成功した。しかし、中国軍が2月29日に黄河の堤防を爆破したことで、3月1日に堤防の破壊口から濁流が溢れ出すが発生した。


 これに伴い、一部の部隊が浸水により孤立し大損害を受け、軍司令部は追撃戦の中止を決定、日満本土から更なる増援と物資を得た上で攻略を再開すると決定した。


 人為的な河川氾濫工作に対し、現地司令部から報告を受けた日本政府は、無実な中国国民を我が軍の統治下にあるという理由で人災によって傷つけるだと大々的に非難、国際連盟もこの事態に対応し黄河決壊の被害を調査する調査団を派遣、この事件の事実確認を行うこととした。


 また、アジアに植民地や保護国を持つ英仏を中心に人道支援が行われ、両国の中国駐屯部隊による直接的な現地復興支援も行われた。普段親中路線を打ち出しているアメリカのルーズベルト政権は、この事件に黙秘を貫いたものの、東方イスラエル国から情報を仕入れたユダヤ人を中心に資金面での支援が行われ、沈黙を守る現政権への非難がまた少し高まることとなった。


 黄河決壊の被害から回復しようと中華派遣軍を中心に現占領地の防衛体制が強化される中、共産党を忌み嫌う満州王国軍を中心に『防衛は増援と中華派遣軍に任せ、先に中国共産党を降伏させよう』という意見が広がっていた。


 これを受け、満州王国国務総理の鄭孝胥ていこうしょは、日本政府に対し満州王国軍の増援派遣の代わりに、海軍によるソ連の牽制と中国共産党拠点であるを要請した。


 国内が準戦時体制に突入し、後方の占領地を統治する部隊を派遣できるようになっていた国防省はこの要請を快諾、の実施を許可した。


 攻略戦発動前の準備攻撃として、中華派遣航空軍による猛烈な空襲が行われることとなり、中国共産党影響圏では共産党に対する不信感が増すなど民心にも乱れが生じる状態になっていた。


 中国軍による数々の暴虐に対する反撃である、とも言われたこの空襲作戦は、地上における長距離爆撃の練習とも言われており、対空兵装の多くが破壊されていることもあり、本土で訓練を終えた新人パイロットが延安爆撃及び制空任務で実戦を経験することも増えていった。


 度重なる空襲により、ソ連からの十分な物資供給も一部において怪しまれる中、さらなる増援を得た日満連合軍は延安攻略作戦を発動、中国共産党の息の根を止めるべく進撃を開始したのだった。

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