第4話 色の町
さて、丘の先って言ってたが……
「気のいい人たちでしたね」
ナルと笑みを浮かべながら歩く、その手はまだ握ったままだ。
「手を握られるのは嫌じゃないか?」
「いえ、全然!むしろ何も見えないので助かります」
会って数分の男にこんなに気を許して大丈夫なのだろうか、この子は…あれ?
「そういえばさっき、兵士に駆け寄って診てくれていたよな、あれって?」
その言葉に当の本人もキョトンとした顔をする。
「そういえば、なんで分かったんでしょう?」
「あの瞬間だけは目が見えてた…とか」
「あはは、さすがにそれならもっと覚えてますよ」
笑いながら否定される。
「けど、あの時色々聞こえた気がするんです、呼吸とか、心音だとか……」
うぅん、と首を傾げる。
丘を登りきったその先には【芸術作品のよう】と形容する他無い、中央に大きな風車がそびえる町が見えた。その町は家屋の外壁、屋根、道に至るまで様々な色で満ちていた。
「ナル…もしお前の目が見えるなら、絶対にこの風景を見せたいよ」
「え?そんなに素敵なんですか?“色の町”は!」
道中、花が多いとは思っていた。
町の付近はもっと鮮やかだ、管理が行き届いていて、町へ伸びる道を挟み色とりどりの花が咲き誇っている。見たこともない花ばかりだ。
緩やかな下り坂の道を慎重に案内していると、町の住人だろう子供たちが迎えてくれた。
「おじちゃんたちどこから来たの?」
「おねえさん、おひめさまみたい!」
「ねぇおねえさん、これあげる!」
と口々に言う。
それに対しナルはしゃがみ
「ありがとう、素敵な花だね」
と微笑んでみせた。
花を渡した少年は渡した花よりも顔を赤くして、町への案内を始める。
「この町はね、“色の町”ってよばれてるんだよ!町にはいろんな絵が有るんだよ!僕が描いた絵もあるんだ!」
一丁前に口説きやがって…
「ごめんね、実は私目が見えないんだ、でも、治すために旅をしてるの!」
少年は悔しそうに口を尖らせる
「だから、もし私の目が良くなったら君に私の絵を描いて見せてもらっても良いかな?」
ナルの言葉に少年は目と口を大きく開いて喜び
『任せとけ!たっっっくさん描いてやる』と胸を張って見せた
俺とは逆、ナルの右の手を掴む少女が
「おねえさんたちも花祭りを見に来たの?」
と尋ねる。
なんでも今、年に一度、絵の具の材料にもなる花の収穫を祝って祭りが開かれているとか。
町に着き、門兵に手紙を見せると慣れた手つきで身元を証明する「旅客証明書」なるものを作ってくれた、旅の記念品にもなるようで5色の花びらの刺繍が施されている。
町へ一歩踏み入ると、ナルが小さく笑った
「楽しい音がたくさんします、楽しみですね」
花の甘い香りと日に当てられてか、気恥ずかしさに花の奥をムズムズとさせながら。子供達に手を引かれるままに町の中央広場へと進む。
_こういうのはなかなか本題が進まないんだよな。
そんなことを考えながらもコレからの長い旅の相方の年相応、可愛らしい笑顔をしっかりと瞼に焼き付けた。
━━━━━━━━━━━━━━━
王都のツアーガイド「祭り好き必見“花祭り”」より
【王都から途中村にて休憩有り 2日の馬車旅、快適、安全のシーリン交通 おすすめの屋台からおすすめのデートスポットまで、華やかな祭りの後は一転、神秘的な色の洞窟での大人なデート、コレでプロポーズも間違いなし】
▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽
こん…ばんは?にちは?家戸あずです
無自覚な女の子らしさ、いいですよね。
おじさんもきっとドキドキしちゃってますよ
元々は活発、快活が取り柄のナルちゃんですが、さすがに走ったりは出来ないですね…
あと少年、悪いが本編におねシ○タは無いぞ。
フォローや評価
コメントや考察など、ぜひぜひしていってください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます