第5話 はなうた
祭りの雰囲気というのは良いものだ。
案内をしてくれた少年の言う【花祭り】は花から採れる顔料の祭りだそうで、色の無い、つまり白い少女は良いキャンパスになっていた。
真っ白だった肌も、髪も、服も 様々な色粉をかけられ、今は町の子供達と手を繋ぎ踊っている。
その姿はまるで…
「花の妖精のようじゃの」
花壇の
「ほれ、どうせ踊らんなら絵でも描きな」
そう言って顔料の入った器を隣に置き、座る
「絵の才能なんて無いぞ?」
老婆は鼻で笑った
「描くために才能なんざ要らんのじゃよ」
そういいながら指に顔料をつけては画材に色を塗りたくる。
_まずはやってみるか。
かなり熱中していたようだ。
気づいた時には老婆はいなくなり、空は赤みを帯びていた。
「そろそろお家に帰らなきゃ」とナルが送り届けられ『またね』と手を振っている。
随分と気に入られたものだ。
「絵は完成したんですか?」とナル
「聞いてたのか、まぁ…上手くは無いがな」
「見られないのが残念です」
本当に残念そうに眉を落とす。
それから俺たちは、屋台で買った食べ物を手に町の散策をした。
広場を中心に四方に大通り、東と西に門があり、その間を所狭しと様々な商業施設。
南には農産業が盛んな区画があり、主に野菜と花が育てられている。
北には町長のものと思われる屋敷、町を一望できる丘陵公園があった。
「どこを見ても緑があるな、栄えては居るが、自然と生きているような…」
ベンチに座りながら夕景を眺めていると、ふいに肩に頭を預けられる。
流石に疲れが出たようで眠たそうにしている
「すまない、そろそろ宿を取りに行くか」
_しかし参ったな、こんな祭りの期間に宿など空いているのだろうか。
驚いたように姿勢を直し、それでも眠たげな声でナルが話す。
「あ、それでしたら エトラちゃんの所に…」
再び頭を肩にぶつける。
仕方がないので、おぶりながら話を聞くと、ナルを送り届けてくれた少女の家が宿を営んでいるらしい、ナルの案内に従い大通りを行くとそこには【宿屋・アトリエ〜ル】と子供の書いただろう看板が掲げられていた。
木製の扉を開くと、割烹着を着た少女【エトラ】が迎えてくれた。
「いらっしゃ…あ!!おねえちゃんだ!!ようこそ〜!!」
『こっちこっち!』と招きながら受付横の暖簾から母親を呼ぶ。
奥からパタパタと早歩きで女将が顔を出す。
「ようこそ、いらっしゃいませ。エトラから話は聞いていたのだけど、あいにく1つしか部屋が空いていなくて」
と困り顔を浮かべる。
「いえいえ、ではナルだけでも…」
「一緒でかまいません!」
ナルが言葉を遮る
「シイナさんだけ野宿とか…そんなことさせませんからね?」
女将も安心したような顔で
「すまないねぇ、朝食も用意するけど、部屋代1人分だけで結構さ。部屋は広いから問題ないと思うよ」
そう言いながら部屋の鍵を寄越す。
通された部屋は3階一番奥の部屋。
女将の言っていた通り二人で過ごすには十分の広さだ。おそらくエトラが口利きをしてくれたのだろう。
夕方に買っておいた旅のための荷物を整え終えた頃、部屋の戸を叩く音とエトラの声が響く。
「湯浴み用の湯桶お持ちしましたー!」
そう、この世界にはシャワーが無い。
桶に湯が張ってあり、布を湿らせ拭いて体を綺麗にする。
「ナル、先に使っていいぞ」
そう言って部屋を出ようとするとナルに袖を引かれる。
「あの…手伝ってくれませんか?」
……
…
「あの…」
………しばらく固まっていた。
__いいのか?あって間もない、しかもおじさんと、いやおじさんじゃないが、そんなに気を許して良いのか!!?!?
結果としては
「俺の意気地無し…」
扉の前でしゃがみこみ自らの額を叩いた。
今、部屋の中には女子が2人。
内1人は目が見えない少女、もう1人はさらに年下の…そう、エトラに頼んだ。
ナルの『くすぐったい』という声と共に部屋の外にまで聞こえてくるエトラの鼻歌はどこか懐かしさを感じた。
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大通り 屋台通りにて
「ナル、お前いつの間にそんなに買った?」
右手に屋台の食べ物を持つナルに問う
「さっきそこでもらいました」
そう言いながら焼鳥を口へ運ぶ
「んっ!これ!美味しいですよ!シイナさんもどうぞ!」
食べかけを差し出される
「ーーーーっ、いいよ、貰ったのはナルだ」
『えぇ?いいんですか?』と言いながら美味しそうに頬張る。
_よく耐えた、頑張れ、俺の理性。
▲ ▽ ▲ ▽▲ ▽ ▲ ▽
どうも、家戸あずです
入浴シーンだと思いましたか?
残念、シイナおじさんは紳士でした
ナルが食べてる焼鳥の屋台はその後しばらく列が出来てました、美味しく食べる子、良いよね。
ちなみにナルは16才、人見知りしないどころか距離感バグ、とっても元気な子です。
ps.シイナさんさぁ……そろそろ外見触れられない???
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