第19話 人の姿をした怪物 ②

——教国

——首都デヴリン・セントヴルド教会



『父さん、学校って何?』

『学校か? 志を同じくする者達が神の教えや言葉を学び、より正しき者となる為に励む場所だ。あそこには白教徒スノーホワイト灰の者シンデレラもいるが、だからこそ外の世界を知る事も出来よう。お前も12になったら行く事になるだろう』


 ま、結論から言うと俺が学校に行く事はなかった。俺が12になった年のやけに涼しい夏に、父親はっちまったのさ…


 今でもよく覚えてるよ、落雷でデヴリンの中でもまあまあデカい白教の教会が燃えちまった日だった。父親は目を見開いたまま、そこのヴルドラのレリーフを握って老いた老人みたいにトボトボと歩いてセントヴルドに夜帰ってきたんだ。


『おかえりなさい父さん…父さん?』

『あれこそが本物の信仰…福音…御心…ギギギギ…ギャッハハハハハハハハ』

『え、父さんどうしたの!?』


 低く唸る獣みたいな声で、下品に笑い出すもんだから俺ぁ相当にビビったよ。で、俺の声に振り向いた父親はぬるりと俺の肩を抱いてこう言ったんだ。


『モリス!!! 俺は、真なる信仰を知った!! 白く穢れたクソどもも、教えも持たぬ売女の灰どもも全部異端だ! ゴミだ!! クソの中のクソだッ!!!』

『ひっ…父さん、どうしちゃったの!?』

『モリス、お前は学校なんて地獄の様な場所へ行く事などないのだ! これほどの僥倖が他にあるか!! ええ!!! お前は真の黒教徒ブラック・プリンセスに…いや、ヴルドラの僕となれるんだ、幸せ者だああああああああ! アッーハハハハハハハハハハハハハハハハ』


 父親は祭壇や燭台を持っていたレリーフで粉々に打ち砕いきやがったんだ。何かにラリってたんだろうな。


『モリス…モーリ〜ス♪ 学校について誰から聞いたんだ? はぁ…父さんに教えなさい』

『ミカおばさんだけど…ヴルドラって何?』

『ヴルドラ!! 嗚呼、真の姿!!! 福音福音福音!!! …そうか、あのクソアマか…』


 救われた様な顔をしたと思ったら、突然憎しみを剥き出しにした顔で歯軋りし出したんだ、ミチチって凄く不快な音だったよ。


 そして翌日…これが俺の原罪とも言えるかもな。


『皆!! 鞭を持て!! このクソアマは我が最愛の息子モリスに、邪悪で穢れた白教徒や灰の者と接触しうる危険な情報を!! 意図的に背教者にするべく差し出した!!!』

『い、痛い…どうか離して下さい神父様!!』

『し、神父様…これは一体?』

『罰だッッッ!! 我ら黒教徒こそ真なる代行者だ!! 我々は常に受難も苦境も超克し!! そして福音を授かるに能う存在へとなれるのだ!! 福音を授かりたくば、モリス!! このクソアマの服を裂き、鞭を打って罪を注ぐのだ』


 明らかに父親が何かの異常を抱えてしまった事は明白だったんだが、凄まじい気迫でな。…俺ぁ、抗えずにミカおばさんの服を割いた。


『モリス…あんたは賢い選択の出来る子だろう!?』

『はっ…はっ…はっ…はっ……ごめんなさい』

『アアアアアアアアアアア!!!』


 俺は愚かな選択をしちまった。で、誰かが折れちまえば周りもそれに感化されるのが人間って生き物さ。


『いいぞ! モリス…流石は俺の息子だ!! 皆も続け!! このクソアマの罪を皆の手で注ごうぞ!!! ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』


 ミカおばさんはその場にいた50人以上に鞭を…そんな惨状を見て、父親は凄く楽しそうに笑っていたよ。

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転生して最強の吸血鬼に育てられた俺、†シュヴァルツ・フェイトグランデ†は片翼の天使と最強のエクソシストになりました。 溶くアメンドウ @47amygdala

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