第6話 こわくない
「おにちゃ、まて、まて~」
「おまえの妹、何でついて来るんだよ」
「おにちゃ、おやちゅ~、パン」
ルナは兄たちの後を追って、賢明に走った。
先頭を走るソラはスピードを緩めなかった。
「あっ」
ルナは両手をついて転んだ。
遼平が抱き起こそうと足を止めた。
「ほっとけ、ほっとけ。甘やかしすぎだ。ついてくんなよ」
ソラはルナに吐き捨てるように言った。
やがて、走るのをやめたソラは、レイの部屋に入って行った。
遼平は慌てて止めた。
「レイちゃんの部屋に勝手に入ると叱られるよ」
「いいから、いいから、気にすんなって」
ソラは躊躇うことなく奥の部屋の扉を開け、クローゼットに近付いた。
「おお、いいものあるじゃん」
薄いピンク色した箱に濃いピンクのリボンがかけられている。
ソラは箱を破いてワンピースを取り出した。
「桃香、着てみろ」
」
そこへルナが追い着いて来た。
「だめ、レイちゃの、レイちゃの」
「うるさいガキだな、おまえはここに入っておけ」
ピンクの箱の入っていたクローゼットにルナを閉じ込めた。
「おにちゃ、おにちゃ、たちゅけ……」
クローゼットの内側から扉は開かなかった。
「おにちゃて、鬼ごっこしてるんかよ、こいつはいい、おっ、桃香、似合うじゃないか」
「ちょっと小さい。脇が破れた」
あとでよく調べたら、レイが500円玉貯金をしていた郵便ポストの赤い貯金箱が消えていた。
シングルマザーのソラたちの母親はパチンコに夢中で、食事も食べさせず、ソラたち兄妹は同級生の家を渡り歩き、ご飯を食べさせてもらっていた。母親たちの間で、ご飯を食べさせるまで帰らないというので有名だった。
もう行く家がないので、今度は桃香のそう親しくもないクラスメートの家について行っているということだった。
あの日、何もなければ、大谷家でもそういう腹づもりでいたということを児童福祉局員から一平が聞いて来た。
お目々ギュッと、ちゅむったらこわくない。
ルナは両手で自分の目元を覆った。
レイがガクに目が見えなくて怖くないかと訊いたときの話だ。
クローゼットの中の暗闇でも、目を瞑っていたから怖くはなかったとルナが行った。
【了】
『🏡ルナの災難💓』に最後までお付き合いくださいまして、
ありがとうございました!
まめははこさん、背中を押してくださり、ほんまおおきに🎵
『🏡ナオが消えた💓』の「ナオさんのお子様がナオさんの様にかわいらしくお茶目に大活躍するお話も拝読したいなあ、と思っております。」のまめははこさんのコメント、皆様にルナが可愛いとおっしゃっていただけて出来上がった話です。
大活躍出来たかどうかは、はなはだ疑問ではありますが、
次は『🏡レイの恋物語💓』でお目にかかりたいです。
https://kakuyomu.jp/my/works/16817330660939539979/episodes/16817330660939664687
6🏡ルナの災難💓 オカン🐷 @magarikado
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます