90 鶴巻中亭二〇二号室(完)
〔天〕「サーセン、加奈さんが中々起きなくて」
寝ぐせが爆発した
〔加〕「仕方なくない。昨日うちら山に行ってえ、滝とかで
加奈がフナムシのごとく
〔餌〕「
〔飛〕「そもそも
〔下〕「ただひたすらに暑苦しいっす」
〔加〕「良いじゃん。
〔天〕「加奈さん、恥ずかしいって」
大きなガタイに似合わぬ優し気な手つきで加奈の手を離そうとするも、加奈はますます
〔仏〕「暑い時に暑苦しいもの見せんなって」
〔松〕「美しさが
〔加〕「野獣は黙ってゴーにゃんの腹毛をもふっとけ。ゴーにゃんがかまちょモードだぞ」
〔仏〕「かまちょじゃねえんだよ。それに『ゴーにゃん』って何だ」
ゴーギャンの
〔加〕「だってミルクティー色のオスネコにしか見えん」
〔仏〕「だからネコじゃねえって言ってんだろこのシーサーがっ」
〔天〕「加奈さんは可愛いよ」
天河がすかさず加奈に声を掛けた。
〔加〕「だよねっ。さすが
一息で言い切った加奈は仁王立ちすると、手近なジョッキを取って一気に
〔シ〕「あああっ。俺のビワの葉茶があああ」
シャモのビワの葉茶を飲み干した加奈はぷはあっと天井に向かって息を吐くと、一瞬動きを止めて爆笑した。
〔加〕「あれ超マジ受ける。みのちゃんがSNSブロックされた『
バシャバシャとスマホで竜田川千早改め『吾輩は昌華feat.藤巻しほり』のポスターを撮影する加奈。
〔シ〕「は、ちょっと待て。藤巻しほりって加奈ちゃんの同級生でしょ。【みのちゃんねる】のビーチサッカー回の収録で藤巻しほりちゃんを連れてきて俺に紹介してさあ。あの後大変だったんだけど」
シャモが食いつかんがばかりに加奈に詰め寄る。
〔加〕「
〔加〕「それにしてもくされパンダに礼を言うぞ。
〔加〕「うち、生きながらにして違う人生に飛んだみたいだわ。ね、彦龍♡」
加奈さんは可愛いよと、天河は『みそうどんぐちゅぐちゅ』もまっ茶色な溶けぶりである。
山、民宿、お泊り。
そして怪我をしたはずの
〔シ〕「その民宿の名前ってさ」
シャモと仏像が目を合わせると、勢いよく味の芝浜の引き戸が開いた。
〔長〕「お前らヒドいって。何で俺を起こしてくれなかったんだよお」
これまた足首の怪我が無かったようにピンピンの長門の両手には、
そして――。
〔長〕「だからあの宿はぼろすぎてヤバいっつったろ。隣の部屋でお前らの声が丸聞こえでいたたまれなかったんだよ。お前らのアリバイ作りのためだけに連れていかれたあげくにアレはひどいって。マジで二度と嫌だ」
〔仏〕「
〔加〕「ゴーにゃんすっごーい。正解っ。まさかうちの事が好きすぎて
誰がだよマジありえねえと吐き捨てつつ、仏像はちらりとシャモを見る。
その様を松尾が感情の無い顔でじっと見つめていた。
※※※
〔三〕「では、仕切り直して」
三元は、えへんと
〔三〕「俺とシャモは、ここに部活引退と、各々の役割を二年生に引き継ぐ事を誓います。餌、仏像、頼んだぞ。それから服部君」
服部が一歩前に出た。
〔三〕「草サッカー同好会部門は、君が引っ張ってくれ。来年からは二つの部活に分かれるが、それまでは同じ『落研』の一部門だ。よろしく頼む」
〔下〕「まじっすか。マジで来年から『草サッカー同好会』が正式発足っすか」
〔服〕「いや、来年度からは『
後の高校ビーチサッカー界の強豪にのし上がる『
〔三〕「で、シャモ締めて」
〔シ〕「え、俺が。えっと、だな。まあ色々あったけど、高三の夏休みまでに普通の彼女と水着デートの野望は果たせなかったけど。多分普通の彼女とキャッキャウフフじゃなくって、春夏秋冬お前らとバカやってるのが俺の本当に本当の望みだったんかなって。ま、そんな感じ。二学期から俺ら三年は一応引退するけど」
シャモは一瞬天井を見上げる。
〔シ〕「まあ、ちょくちょく部活にも顔出すわ」
〔三〕「締まらねえあいさつだなあ。それでもチャンネル登録者数十万人越えの人気配信者かよ」
〔シ〕「と言う訳で、【みのちゃんねる】チャンネル登録よろしくお願いします。メンバーシップは月額六百円。登録しろよっ!」
結局金の話かよと大ブーイングをしつつ、下級生たちはクラッカーをバンバンと鳴らした。
※※※
そして迎えた二学期の始業式――。
~~~
【
〇団体の部
管弦楽部 全国大会金賞
弓道部 団体戦全国大会出場
〇個人の部(順不同)
~~~
〔三〕「個人の部は全員知り合いじゃねえか。情けねえなあ、俺」
推薦入試の面接対策で学校に残ったシャモを置いて、
〔み〕「ほらとっとと着替えて夜の仕込みを習いな」
調理師学校に進んで『味の芝浜』を継ぐと決めた三元は、みつるにどやされながら
〔三〕「卵ってこんなに剥きにくかったっけ」
氷水にさらされた大量のゆで卵を何十個と剥く間に、三元のぷっくりした指が赤く染まる。
〔板〕「この量なら五分で
二度と卵なんて食べるかと三元がうんざりし始めた頃、味の芝浜の扉ががらりと開く。
〔餌〕「
味の芝浜に駆け込んで来た
(続編に続く)
https://kakuyomu.jp/works/16818023213029248935/episodes/16818023213042247051(続編です)
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
☆
この後の原稿も八割がた出来ておりますが、余りに長くなりweb上では読みづらいと思われるので、ここで『落研ファイブっ』は一旦完結扱いとします。
餌&仏像に代替わり後の続編では恋愛&コメディ色が強まる予定です。
ここまでで回収していない伏線的なものは続編で回収されますので、今後ともお付き合い頂ければ幸いです。
また、ここまでお付き合い頂いた上で少しでも面白いと思われたら、ぜひ☆で評価を頂けますとありがたいです(すでに入れてくださった方には篤く御礼申し上げます)。
改めまして、閲覧誠にありがとうございました。
『落研ファイブっ―何で俺らがサッカーを?!』 モモチカケル @momochikakeru
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