89 一並高校落語研究会復活
二学期を目前に控えた
【
〔餌〕「はいはいそれではああっ。
すっかりビワの葉茶に慣れ切った常連組がジョッキになみなみと入ったビワの葉茶にのどを鳴らす一方で、
〔三〕「ほら早速松田君のサインを飾ったぞ。松田君、みなとみらいと
〔松〕「オーケストラとの仕事だと二百人前ぐらいの注文になりかねませんが。三十分以内には配達してもらえますよね」
そもそもそんな事を頼める身分では無いと苦笑しつつ、松尾は軽口を飛ばす。
〔飛〕「松田君の写真入りサインはプレミアがすごい事になりますよ」
サイン色紙に書かれた解読不能なサインを見ながら飛島が目を細めた。
〔シ〕「おいそれより
普通の彼女とラブラブで水着デートもしたいと
〔シ〕「松田松尾大先生、そちらの『藤崎しほりさん』とは本当に本当に何にも無い訳。いきなり記憶が飛んだり、気が付いたら
〔松〕「藤崎さんは僕より十歳近く上の人ですよ。それに仕事関係の方ですから、万が一にも変な噂が立つとやりにくいんです。頼みますよ」
シャモがSNSブロックされた『藤巻しほり』と入れ替わりに松尾の元に現れた『藤崎しほり』に、一同は
〔下〕「写真を見ても目に邪気が無いっす。やっぱり別人。この前まっつんと一緒に来た時だって変な感じはせんかったし」
スマホで藤崎しほりと
〔仏〕「そもそも
〔飛〕「『しこしこさん』だったらこのシチュエーションをどう料理するのでしょうか」
手当たり次第にリアル知人に☆を要求したおかげで、仏像の父である
〔仏〕「
〔シ〕「だとしたら何で松田君に」
〔下〕「マーリンズのお百度参り事件のターゲットはまっつん系だったし」
元々のタイプはそっちかとシャモが納得しかかっていると、仏像が話を続ける。
〔仏〕「松尾の前に『藤崎しほり』が現れた理由は『お百度参り』のおせち三段重を食べたのが松尾と
たぶんそんな流れで話を作るんじゃねえかなと仏像は推測した。
〔下〕「すごいっすね
〔仏〕「そんな訳ねえだろ」
仏像は全力でみそうどんぐちゅぐちゅ疑惑を否定する。
〔シ〕「いやまじでそれだわ! やっぱり藤崎しほりさんは藤巻しほりちゃんなんだよ。だって松田君は『お百度参り』時代から一貫してしほりちゃんに好意的だったじゃん」
〔松〕「好意的かどうかはさておき、あそこまでヤバい人扱いする理由が分からなかっただけで」
本当に僕たちはただの仕事仲間ですからねと、松尾は再度念を押す。
〔三〕「でも仮にそれが正しいとしたら、シャモは『普通の彼女と普通にラブラブ』的な事を絵馬に書いた。藤崎しほりさんは世界的バレエダンサーだろ。普通の女じゃない。結ばれる訳が無いじゃねえか」
〔松〕「
三元と松尾の発言に、シャモの表情は大忙しだ
〔餌〕「シャモさん。何度でも
〔仏〕「だからこの話は『しこしこさん』だったらどんなストーリーにするかってただの思考実験だろ。藤崎しほりと藤巻しほりが同じ『お百度参り』なんてあって良い訳が無い。そも世界線の
〔餌〕「ゴーちゃん、焼きもちを焼かなくても大丈夫ですよお。お宅の旦那様は嫁一筋だから、ぐふふふ」
〔仏〕「何バカなこと言ってんだ。そう言うアレじゃなくてだな、その」
もしも複数の世界が同時に存在するなら、松尾の実家で兄弟同然に育った世界があるのだろうと思う仏像である。
〔松〕「そう言えば仏像さん、その後れんさんとは何か進展が」
〔仏〕「ある訳ねえだろ。今日は
〔三〕「えーそれでは本日は誠にお日柄もよく」
〔三〕「ここに
〔餌〕「SNSブロックで終わった話を蒸し返しますか」
〔シ〕「ちがうんだって。俺は広島に行ってヒバゴンに会って新幹線で戻って
〔仏〕「黙れややこしい」
仏像がシャモを
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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