88 理不尽の理
〔荒〕「
元サッカー日本代表にして海外のビッグクラブで活躍した
〔下〕「全部の試合に出たいっす。大きなものから小さなものまで、全部の試合でゴールをしたいっす。全部の試合で勝ちたいっす」
〔荒〕「その気持ちは大切だよ。だが、君はこの後二十年以上第一線で活躍する超人気サッカー選手にして日本代表の
〔荒〕「長いキャリアの中では敗北どころか、時には試合を捨てざるを得ない事もある。それどころか、ある日突然サッカーを奪われる事すらある」
〔荒〕「ここ一年、サッカー選手としての君にとって
〔荒〕「感情の奴隷になるのではなく、感情を否定するのでもない。感情の奥にある本当の君を見つめてごらん」
〔服〕「それで、『落研ファイブっ』最初期メンバーの意見は」
服部が第二試合の決勝点を挙げた
〔餌〕「他チームが全部
それまで無言で成り行きを見ていた餌があっけらかんと笑うと、全員がつられて笑う。
〔三〕「落語をこんなバカな理由で奪われたのはやっぱり気に食わない。それでもビーチサッカーを習いに
続いて意見を求められた三元は、しばらく考え込んで重い口を開いた。
〔三〕「そう考えれば、これはこれでアリだったのかなとも思う。だから『落研ファイブっ』がこの大会を
〔多〕「服部君、どうする」
〔服〕「来年は
〔多〕「皆本当にありがとう。そもそも落研を草サッカー同好会にしたのはこの
深々と頭を下げる
※※※
〔シ〕「しほりちゃん?!」
今度こそ駐車場に向かって松尾と藤崎しほりが歩いていると、トイレからようやく出てきたシャモがひっくり返ったような声を上げた。
〔シ〕「えっ、何で、何でしほりちゃんが松田君と。どういう事。松田君と付き合ってるの」
厄介な事になったと松尾が頭を抱えていると、シャモがしほりに近づいた。
〔シ〕「しほりちゃん。
松田さんこの方は、としほりが眉をひそめて小声でたずねる。
〔松〕「シャモさん、こちらの方は『藤崎』しほりさん。世界的なバレエダンサーです。シャモさんの元彼女の『藤巻』しほりさんとは別人です。しっかりして」
〔シ〕「す、すみません。余りに元カノそっくりだったのでつい取り乱して」
シャモはへこへこと謝りつつも首を傾げる。
〔松〕「いつまでトイレにこもってたんですか。もうミーティングも終わって棄権を決めて、回復食を食べて帰宅するところですよ」
〔シ〕「えっ棄権すんの?! 何で」
詳しくはテントの中の皆さんにとだけ言い残すと、松尾は藤崎しほりの白いスポーツカーに乗って会場を去った。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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