その卑小なる吸血鬼こそ神の使徒であり、真の勇者を見抜く者であった

勇敢な若者の心底に潜む嫉妬、そして昏い調略。
名声を得んがために弟を貶めようとする兄はやがてその深き業により自ら望まぬ結末へと向かうことになる。

因果応報と言ってしまえばそれまでだが、主人公の境遇を自分の身に置き換えてみたとき、果たして正しい道を選べる人間がどれほどいるというのだろう。

偽物の勇者が即物的な価値に置き換えられるところに神の諧謔が垣間見えた気がして戦慄を覚えた。