それはまるで、我が子の成長アルバムをめくるような温もりを持って…。

 鉄道オタクの中でも「乗り鉄」と呼ばれる人種の男の子が主人公の物語。彼は幼少の頃、旅先の駅で泣いている可愛い女の子と出会う。すぐにその女の子とは別れることになったものの、彼女の可愛い容姿と声が、やけに主人公の心に深く残った。

 それから数年後。偶然にも女の子が隣に越してきたことで、運命は動き出す。女の子が、主人公の“幼馴染”になったのだ。2つ年上の幼馴染と過ごす日々の中で、主人公は様々な「初めて」を経験していく──。



 どことなく客観的でありながら、一人称のように主人公の目線が感じられる。三人称と一人称の中間くらい、とでもいいましょうか。独特な語り口で物語は描かれます。

 その特徴的な語り口と、まだ田舎の匂いを残す物語の舞台がとても良く合っていて、主人公の成長を見守るような、そんな和やかな気持ちで読み進めることができました。

 そうして“見守る”ような気持ちで覗くのは、1人の女の子の存在に翻弄される男の子の姿です。

 幼少の頃に出会った女の子と運命的に再会したことで始まる小さな恋の物語は、何気ない日常の積み重ね。

 その日常の中で、体とともに成長していく、主人公の男の子の心。その「心」の描き方こそが、本作最大の魅力だと思います!

 女の子と会うたびに少しずつ、しかし、確実に大きく揺れ動くようになっていく主人公の心。その心に翻弄されながらも、子供ながらに考えて、女の子のそばに居たい、居ようと必死になる姿

 一方で、恋しながらも大好きな鉄道についつい興味を向けてしまう無邪気さ。

 年を経るに連れ、自分の気持だけでなく“相手の気持ち”にも思いを馳せるようになり、更にドギマギする姿…。

 それら、成長とともに描かれる主人公の心の動きが、とても純粋かつ繊細に描かれていました。

 しかも、物語が進むにつれて、主人公の成長を追うことになるからでしょうか。日々のアルバムをめくるように主人公が何をして、どう考えたのかを把握していくことができ、気付けば親戚の子供の成長を見守るような…。我が子の成長を見ているような。そんな、庇護欲? みたいなものが生まれていました。

 これこそが、上述した本作に感じる和やかさの正体なのでしょうね。

 登場人物が小さな子供だけということで、主人公に同化して没入感を得て読むというよりは、精神的な距離をもって物語を俯瞰できたのも個人的には嬉しかったです。それこそ、読者というよりは親目線で。

 つまり、主人公の男の子は我が子! 彼の一喜一憂に、私も我が事のように共感し、お姉ちゃん幼馴染との恋路を応援せずにはいられませんでした。

 親目線で読んだ、という意味では読む方の年齢によって、大きく感じ方が変わる作品なのかなと思います。いい大人の私が読むとこのような感想になりますが、もっと上の方ならどうか。あるいは高校生、それ以下なら、どんな感想を持つんだろう…? そんな、めちゃくちゃ個人的な興味も湧きました。



 レビュー時点(18話)で、主人公は中学生になろうとしているところです。人生の転機を迎え、体も心も少しずつ大人になっていく和真(※主人公)。果たして幼馴染との恋はどのように変化していくのでしょうか…?

 楽しみです!

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