たましいは亡びぬものの形容詞

長門拓

たましいは亡びぬものの形容詞

「夜ふかしもほどほどにしろよ」とぬいぐるみが喋らないうちに早く寝なさい


一晩中ピアノが弾ける核シェルター地球が亡ぶ日もドレミファソ


旅先の波止場の夢を今日も見てまるで故郷のようだと思う


積ん読をたまには崩したわむれておよその寿命をカウントしてみる


残るのは集めた物より散らした物 でも命まで散らしたくない


液晶の画面に向かい紡ぐ文字が物語になる時の充ち足り


もしかすると何気ないこの一日が私という詩のサビかも知れない


街角のピアノに触れる心地よさ曲の弾けない居心地の悪さ


こと切れた。ひつぎに花をうずめては心の中でおやすみと告ぐ


また一つ古書店逝けり街角の慰安が一つ逝けり。雨降る


たましいは亡びぬものの形容詞 私の文字もそうだといいな


たましいは亡びぬものの形容詞 あなたの文字もそうだといいね


コンビニやマックで豪遊してみたいこの頃そんな声が聞こえる


お彼岸に三年ぶりの夢で会うたまにはお墓参りをするか


星の降る銀河の果ての川べりで汽笛の音に耳澄ます夢


炭酸の泡立ち上る瞬間と人の想いや願いは似てる


うとうとと昼寝しに行く美容室今日も二重の意味でスッキリ


そういえばてるてる坊主を吊るすほど晴れを願わぬ大人になった


あの頃の私が落としたたましいは夕暮れの街でたまに見つかる


ふぞろいの破片も闇もやわらかなまぶたでふさげおやすみせかい

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たましいは亡びぬものの形容詞 長門拓 @bu-tan

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