二人を結ぶ、不思議な関係

深夜のほんの一時を共有する〝少女〟と〝お姉さん〟。二人は取り留めのない話に花を咲かせ、小さな発見と笑いに充足感を得る。しかし、二人の間には暗黙のルールがあって……。

日常の裏側に隠れ潜む非日常。
ときとしてそれは、好奇心を伴って存在を訴えかけてくる。貴方は、そんな非日常の呼び声に応える人ですか。それとも無視して、ひたすらに日常を歩んでいる人ですか。本作はその境界線に鋭く切り込んだ作品となっています。なによりも非日常を突拍子もないものではなく、常に傍にあるものとして描かれているのは最大の魅力といえるでしょう。読み進めるうちに日常の境界線すらも曖昧になっていく感覚は、ある種の美を体現しているとも考えられます。

それを紡ぐ筆致は安定しており、心地良くもありました。むやみに華美な文章を使わず、淡々と話を書き連ねていく。それでも不思議と退屈には感じず、なんなら求心力がある。読ませる文章の一つの形を見せられた気がします。抒情的で示唆に富んだ主人公の視点を通して、貴方は一つの非日常を体験することに。その先で、貴方はなにを考えるのか。独特な世界観を味わいつつ、考察の楽しみに浸りたい方にオススメしたい作品です。