第422話 海中だし、『雷』がベストと思ったのに

 自衛隊外局の、海洋ダンジョン攻略作戦はこうだ。


 すでにもう作らせているが、若干の余裕を込めて長さ110メートルのチューブと言うか、土管のようなものを作る。


 表現すれば土管だが、実際は野間口七菜が特許を持つ、ダンジョン壁を利用した素材製。

 自己修復機能があり、強度も十分。

 水圧にも負けないだろう。


 大きさはダンジョン入り口を覆い隠せる程度。

 直径で10メートルくらいある。


 それを一気に海中に沈め、ダンジョンの入り口を塞いでしまう。


 以後はスタンピードするモンスターは、この筒の中に出ることになり、スライムかオークレベルなら討伐は楽勝。

 数日かけて海水を外部に戻し、筒の中を空気にする。


 あとは一気に青と白、水まんじゅうがダンジョンに侵入。

 中ボス部屋は何階にあるのか、ダンジョン内はどうなっているのか事前情報は全くないが、スタンピードの終息を目指す。


 と同時に、外局にもいた潜水士の免許持ちが、飽和潜水ですでに溢れているモンスターの討伐を行うのだが。

 

 「うーん。やっぱりどう考えても危険だよね。」


 スライム程度とはいえ、酸素ボンベを背負い潜水中の特殊環境。

 潜水士の免許持ちは、さすが体を動かすのが好きなタイプで、全員が身体強化系。

 そんな条件で肉弾戦では危険過ぎる。


 「なら『魔法石』を試そう。」


 と言うわけで、近所のスポーツ施設を貸し切りにし、実験してみることとなった。


 高飛び込み用のプールを使う。


 もちろん海水。


 邦子と、話を聞いて興味津々だった現役大学生の環希と七菜が見学に来た。


 今回の魔法実験で分かったこと。


 それは魔法と現実との微妙な関係だ。


 「まずは『雷』だよね、試すなら。」


 水は電気を通すものだが、いわゆる混じりけのない純水であるほど通しにくく、何かが溶け込んだ水……まさに海水などは通しやすい。


 『雷魔法』で雑魚モンスターを一掃が、1番理屈にはかなっていたが。


 「……」

 「いや、スゴかったねぇ。」

 「スゴ過ぎだよ‼️」


 実験なんで、初級魔法しか使わない。


 なのに、稲光が水面から四散し、全館で停電した。


 ……

 ブレイカーが落ちたらしい。


 『雷魔法』は水中でも問題なく発揮され、海水の電導性がプラスされ威力が上がった。


 『ビリ』と言われる漁法が、絶対禁止なわけがわかった。

 生態系へ……

 いや、近隣を航行する船にまで影響を与える威力だった。


 『火魔法』は、水の中なのに発動した。

 物理無視だ。

 けれど、水中と言う条件が影響するのか?

 威力が低く押さえられた。


 『風魔法』も発動するが、威力は弱い。


 『土魔法』に至ってはやっとコップ1杯程度の土砂が発生した程度。


 『水魔法』はプールが溢れて大変だった。


 『氷魔法』は流氷みたいに盛り上がり……


 「これ、面白いね。」

 と、環希が笑ったが……


 『魔法』は、物理法則を無視して発動する。


 しかし、物理法則にその威力が影響される。


 2面性が観察されたのだ。


 海洋ダンジョンでは『火魔法』を使う。


 スライム程度にはオーバーキルの、エリアの『上級火魔法』。


 周囲のモンスターを一掃し、環境に負けて瞬時に収まる。


 方針が決まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恐竜がパステルカラーで塗られていても、僕達に反論出来る根拠はない @ju-n-ko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画