第6話 小さな国家

午前9時

朝礼が始まる。

他の部署の机から「朝礼っ!」と大きな声が聞こえる。

しかし、僕らの上司は来ていない。

今日も遅刻。重役出勤というやつだ。

この営業という業種はノルマや数字を持ってくることが正義である。

この業種は弱肉強食で数字を持ってこない人間は人間と思われない。

日々怒号が飛び交い涙を流す人間がたくさんいる。ここは本格的な資本主義の世界。

会社のビルのフロアに存在する。一つの「国家」だ。誰も上司に逆らえない。

この国家では、数字を持ってくる人間は大きな権力を振るい。数字を持ってこなければ家畜同然の扱いを受け忌み嫌われる。


ここは考えようによれば天国で地獄だ。


小さな世界の中でしか生きられない。

「この世界は小さな国家だ」

ふと心の中で呟いた。


------------------------------------------------------------------------------------------------


ここで思うことがある。

この世界でしか生きていけない人間は幸せなのだろうか。

営業という職業は歩合制が実施されており。営業で契約を取り続けノルマを超えることで「お金」という見返りを貰う。しかし、ノルマ未達の人間はどうなるのだろう。

「お金」という見返りはない。

ただ、上司に詰められ。怒鳴られ。「〇ねっ!!」や「〇してやる」と言われ続ける。

うつ病になる同期や先輩を何人も見てきた。ここはなぜか男女平等であることから男性、女性関係なく詰められる。

ここに希望など無い。

「お金」という希望に見える絶望をただ追いかけるような世界だ。

顔の目の前にニンジンをつるされた馬。

この言葉が一番しっくりくる。

だから、様々な手段を用いて契約を取ることがある。

ここは地獄だ。

マルチや情報商材といった。詐欺的な商売が流行ったことがあったが、

そんな手口を使うような感覚。

この世界に「自分」はいらない。

この世界では「自分を偽る」ことで生き抜くことが出来る。

それが出来なければ精神疾患で消えていくだろう。

この世界は地獄だ。

何度でも言おう。

------------------------------------------------------------------------------------------------午前9時

朝礼が始まる。

他の部署の机から「朝礼っ!」と大きな声が聞こえる。

しかし、僕らの上司は来ていない。

今日も遅刻。重役出勤というやつだ。

この営業という業種はノルマや数字を持ってくることが正義である。

この業種は弱肉強食で数字を持ってこない人間は人間と思われない。

日々怒号が飛び交い涙を流す人間がたくさんいる。ここは本格的な資本主義の世界。

会社のビルのフロアに存在する。一つの「国家」だ。誰も上司に逆らえない。

この国家では、数字を持ってくる人間は大きな権力を振るい。数字を持ってこなければ家畜同然の扱いを受け忌み嫌われる。


ここは考えようによれば天国で地獄だ。


小さな世界の中でしか生きられない。

「この世界は小さな国家だ」

ふと心の中で呟いた。


------------------------------------------------------------------------------------------------


ここで思うことがある。

この世界でしか生きていけない人間は幸せなのだろうか。

営業という職業は歩合制が実施されており。営業で契約を取り続けノルマを超えることで「お金」という見返りを貰う。しかし、ノルマ未達の人間はどうなるのだろう。

「お金」という見返りはない。

ただ、上司に詰められ。怒鳴られ。「〇ねっ!!」や「〇してやる」と言われ続ける。

うつ病になる同期や先輩を何人も見てきた。ここはなぜか男女平等であることから男性、女性関係なく詰められる。

ここに希望など無い。

「お金」という希望に見える絶望をただ追いかけるような世界だ。

顔の目の前にニンジンをつるされた馬。

この言葉が一番しっくりくる。

だから、様々な手段を用いて契約を取ることがある。

ここは地獄だ。

マルチや情報商材といった。詐欺的な商売が流行ったことがあったが、

そんな手口を使うような感覚。

この世界に「自分」はいらない。

この世界では「自分を偽る」ことで生き抜くことが出来る。

それが出来なければ精神疾患で消えていくだろう。

この世界は地獄だ。

何度でも言おう。

--------------------------------------「この世界は地獄だ」

ふと、声が漏れてしまう。

でも、朝礼の大きな声のおかげで聞こえてはいないだろう。

15分遅れで上司が来た。

悪びれた顔もせず

「朝礼っ!!!」

と大きな声がする。今日も小さな国家は平常運転だ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぼくは「さいわい」を探している 成田行人 @narita8810

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ