渇望ピンク
むこねーさん
第1話
渇望ピンク
絶対に負けたくない。歌も、ダンスも、人気も、あの子にだけは何があっても負けたくない。そんな強い気持ちになったのはいつからだっけ。
私たち「トワイライトミューズ」は二人組のアイドルユニットだ。高校卒業と同時に親友だった
「
「明日はレッスンのあとジムだから!もうすぐライブだよ?そんな暇なくない?」
「たまには息抜きと思ったんだけどなぁ。」
「蒼唯は息抜き多すぎ!」
「萌々子はストイックだなぁ。」
次の日ジムを終え帰宅すると、蒼唯がライブ配信をしていた。覗いてみるとのほほんとした蒼唯の声が聞こえてくる。
『今日食べたクレープ最高だったぁ。何味?えーとね、苺がたくさん乗ったショートケーキ風?写真?撮ったよ~。明日SNSに載せるね。』
私はこの子に負けてるの?こんなに頑張ってるのに、どうして蒼唯のほうがライブ配信に人が来てるの?コメントだってアイテムだってたくさん投げられてる。心の中が「私だって」で埋め尽くされる。もうすぐライブがある。私はまた蒼唯に負けるんだろうか。蒼唯のライブ配信に集まっている蒼唯のファンは、心から蒼唯を求めてるように見える。じゃあ私のファンは?私は?そういえば、私はファンの顔ってちゃんと見てたのかな?私が見ていたのは、ずっと蒼唯の背中だったのかも知れない。必要とされてる蒼唯が羨ましくて、たくさんのコールが喉から手が出るほど欲しくて、私は頑張り方を間違えてたのかな。蒼唯の配信のコメントに一言、「お疲れ様」と打って送ってみた。
『萌々子!お疲れ様。来てくれてありがとう。萌々子すごいんだよ、今日もレッスンのあとジムも行ってきたんだって。萌々子は私の憧れなんだ。』
優しい蒼唯の声がする。私はなにをしてたんだろう。勝手に蒼唯を敵視して、妬んで、貶めたいと思ったこともあった。蒼唯のファンを奪ってやろうとも思ってた。私は大事なものをどこかに落としてきてしまったのかも知れない。私は潤んだ視界で、「頑張ろうね」とコメントを打った。
End.
渇望ピンク むこねーさん @muconee
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます