第4話-雨のち晴れ-
「先生っ!!うい、雨依ちゃんがたおれたって聞いたんですけどっ!!!だ、大丈夫なんですかっ!!!!!!!??!??」
「空色さん、落ち着いて。町中さんはただの貧血よ。大丈夫だから」
「でも、たおれたって!ケガとか!」
「しゃがみこんで、そこから倒れたみたいだから大したケガはないわ。大丈夫よ。落ち着いて?空色さん」
「あっ、す、すいません…」
「お友達が倒れて心配するのはいいけど、自分が取り乱してちゃ、町中さんも混乱しちゃうでしょう。」
「すいません…」
「あら、ごめんなさいね。責めるつもりなかったのよ。………様子、見ていく?」
「は、はいっ!!!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
晴のこえがする...。どんなときでも聞いていたい、あの優しい声。せい、晴……。
「せ、ぃ………」
しとしと、と雨が降っている音がする。
さっきまで曇りだったのに、いつの間に雨が降ってきたんだろう。
ゆっくりと意識が覚醒してきて、鼻腔をくすぐる消毒液の匂いがする。
ここ、保険室か…誰が運んできてくれたんだろう。
と思いながらゆっくりと目を開けると、
真正面に晴がいた。
「せ、せい……?」
「そうだよ!晴だよ!!うい、大丈夫!?」
自分が呆然としていると、晴は手を握りしめてこっちを見つめてきた。
晴のことを認識した瞬間、さっきまで考えいたことが頭をめぐり、頭が痛くなってくる。
それに晴が手を握っているから嬉しくて、体が熱い。
でも嬉しいと同時に思考が高速で回る。
晴は自分のことが嫌いになったんじゃないのか、じゃあなんでここにいるのか、と疑問がたくさんあって頭がぐるぐるする。
あつい、さむい、いたい、うれしい、なんで、どうして、なんで……色んなことが重なって頭がパンクしそうだった。
それに、寝ぼけていたっていうのもある。
自分は気がついたら、言葉を、発していた。
「せい、は、自分のこと、きらい…?もう、嫌になった?鬱陶しい?ご、ごめん。ごめんね。もうしないから。ごめん、」
そうつぶやくと同時に涙が出てきた。
気を緩めると溢れてしまいそうだ。晴が次、なんて言うのか分からない。怖い。なんで直接聞いちゃったんだろう…。と後悔が募る。
自分がやっぱ忘れて、と言おうとすると、晴が口を開いた。
自分は身構えて、ぎゅっと目を瞑るとふいにあたたかいものが自分を包み込んだ。
目を開けると晴が自分を抱きしめていた。
顔がかっと熱くなる。
体全身が麻痺するように蕩けていく。晴は自分の耳元で囁くように言った。
「うい、何を勘違いしてるのか知らないけど、ういのこと、鬱陶しいなんて思ってないよ。嫌いだなんて思ってない。だからそんなに謝らないで?ね?私、ういのこと大好き。絶対嫌いになんかならないよ。うい、大丈夫だよ。大好きだよ。」
だいじょうぶ、だいすき。と晴は自分に囁く。あまいあまい密のように優しい言葉で、自分の心をほぐしていく。
さっきまでのズキズキグルグルするような頭の痛みはなく、今はただ、頭がぽやぽやして何も考えられなかった。
ひとつだけわかったのは、雨がやんで、窓から夕日が差し込んで、太陽も自分を包み込むように、暖かく照らしてくれていたってことだけ。
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