第1話-タイムリープハイ-

ゆっくりと意識が浮上していく。


最近あんまり寝れてなかったのにすごいぐっすり寝た感じがする…。

そう思い目を開けると見知らぬ天井…ではなくものすっごく見知った天井なんだけど…。え、もしかして自殺失敗した?あれでもじゃあなんで病院にいないんだ?ん?次々と疑問が浮かんでくる。


「予定ではせいと天国でいちゃらぶ生活か転生るーとなはずなんだけどなぁ…」


少し舌っ足らずで高い声が口からこぼれる。


その声に違和感を覚え、ゆっくりと体を起こした。

ん?ってゆーかここ、昔の自分の部屋じゃないか…?

勉強道具は当たり前、晴との写真もないし、部屋に置いてあるものが少し小さい。寝っ転がっていたから分からなかったがベッドから出ると目線の低さに戸惑う。

よく分からない状況だが、とりあえず考えてみることにした。


「なぜか子供のころの部屋にいて、目線は低くて、なんかこころなしか体もあったかいきがする…。」


そういって考えるがなぜだが頭があまり回らない。

これでも頭はいいほうだったんだけどな。

うーんうーんと考えているとひとつの結論に至った。


もしかして自分、過去に戻ってるんじゃね?と、なぜか未来の記憶を持ったまま過去に来てしまって、未来の運命を帰るためにきた…とか。

そうでもしないと過去にいる説明がつかない。

あれ、過去って勝手に決めつけてたけどここほんとに過去か?

てとてとと部屋の中を見回って見るがカレンダーらしきものは見受けられなかった。

「まぁ、過去の自分の部屋なんだし、過去ってことでいーよね。」と勝手に結論ずける。


とりあえず自分の仮説があってるとしても、何も行動しなければ何も始まらない。

ということで、ここが過去だという証拠を見つけにいこーう!!れっつごー!!!

とまぁこんな感じで子供特有(?)の好奇心ハイテンションでいっちゃうよーっ!!!


とりあえず部屋をでて親がいるリビングに行くことにした。とん、とん、と階段を下っている最中に思う。

お父さんとお母さんに何も親孝行してやれなかったなぁ…と。大事に育てた子供が自殺って…。うん、ごめんねお母さん、お父さん…。自分、今世ではちゃん親孝行するからね!!


そうこう考えている間に部屋の前についた。なぜが罪悪感で胸がドキドキしちゃってるよぉ…。

意を決してドアを開けると、これまで小さい頃から何千何百と見てきた光景が広がっていた。

お母さんがご飯を食べながらお父さんに喋りかけてて、お父さんはそれを新聞を読みながら頷いて聞いている。一件一方的に見える関係だが、うちの家族はこれでいい。

思わずうるっときてしまった。おかしいなぁ、昨日も見たのに。少し強ばらせながら2人に声をかける。


「おはよ」


たったそれだけなのにやっぱり声はなんか上擦っちゃって、涙声みたいになってしまった。2人同時に

「「おはよ」」

と言われて、もう1回この顔を見れて心底良かったと思った。

転生じゃなくて、過去に戻って、良かったのかも。今世はちゃんと晴と幸せになって、親孝行するからね…!!


あ、親との再会に感動して忘れてたけど、これでもう過去確定なのでは…?というかよく見るとお母さんの顔が若々しい気がするし、お父さんはハゲてないし、白髪も少ない。多少なりとも若返ってるからやっぱり自分が小さい時にタイムスリップしたのがわかる。

あとはカレンダーを見れば完璧!朝ごはんをもぐもぐしつつ、カレンダーに目をやるとやっぱり過去。自分が小2位の時にいることがわかった。

よし、あとは晴がちゃんといるか確認すれば大丈夫。これで晴がいなかったら自分、もう1回死ぬ気がします。


そんなこんなで頭を悩ませながら色々考えていると、登校時間が迫っているようで、お母さんが急かしてきた。


「ういーー?早く支度しないと晴ちゃん来ちゃうわよ〜」


ん、?え?まってお母さん待って今、せいって…!!


「おかーさん、せーちゃんいるの!?!、?、」


なんと子供というものは恐ろしいもので、考えてたら不意に言葉に出てしまった。

いやだってさぁ、急に言われたらびっくりするじゃん!もっと心の余裕が欲しかったです!まぁ自分が一方的に戸惑ってるだけなんですけど!

というかお母さんびっくりしちゃってない!?これ大丈夫!?自分結構突拍子もないこと言っちゃったかも!!

そう思いびくびくおろおろしているとお母さんがはわっと笑って言った。


「あんたほーんと晴ちゃん好きねぇ。あ、ほら、早く支度しなさーい。」


えぇ…。今の言葉、「あんた晴ちゃん好きねぇ」で片付けちゃっていいのぉ…?まぁいいけどさぁ、

そうぶつぶつ言いながら着替えて準備してると、不意にぴんぽーんとチャイムの音がした。


「ほらっ、晴ちゃん来ちゃったじゃない!早く行ってきなさい!!!」


………呆然とした。

今から晴に会いに行けって!?まってまって心の準備させてだってまだ起きて2時間も経ってないよ!?まさか自分もこんなに早く晴と会えると思ってなかったからさぁ!?

いやまってさっきお母さん言ってたな…晴ちゃん来ちゃうよって…やばい、どうしよう、晴という言葉に反応しすぎて気づいてなかった…。


自分は、ドアノブに手をかけたまま固まってしまった。

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