第13話 記憶の鍵
各国から有名な巫女や呪術師が集まり、祈祷儀式が始まる。
呪術師たちが小さな
「きれい……」
月牙龍泉の池の水面に映る
「泉から水が出た!」
「天からの恵みに感謝します!」
「天帝はこの結婚を祝福している」
奇跡のように泉から水が湧き出て、皆が歓喜に沸く。儀式も終盤に入り、薄明りの中で空を見上げて憂炎はつぶやいた。
「それにしても、信じられないな……」
憂炎の隣にいる凛風は話しかけていいのか躊躇う。儀式の途中の雑談は良くないと教育された。燿国ならありえないが、和やかな雰囲気に思わず声をかけた。
「何がですか?」
「凛風が妻だなんて……夢みたいだ。我が国に来た時、この目で早く確認したくて使用人の恰好で会いに行ったんだ」
夜空に浮かぶ
凛風を見つめる瞳が熱を帯びる。恋愛に疎い凛風でもさすがに気がつく、では何故か――。
「わたし、どこかで憂炎さまとお会いしたかしら?」
「……あの時、助けてくれただろう」
凛風は怪訝な顔をする。
「ふう――。余が幼かったから無理もない。凛風殿の国に招待された。七年前の〈初夏の饗宴〉だった」
(毎年恒例の母国の行事だわ。でもどうして? わたしはずっと出席していないはずだけど……)
「あの頃、そなたには婚約者がいたから……。ごめん。あまり触れられたくない話だね、しゃべりすぎた」
「!」
「今はまだ十四で、恋愛対象に思われていないことは分かっているんだ。余もそのうち大人になる、だから――凛風?」
頭の奥が揺さぶられた。
「わたしに、婚約者?」
七年前といえば、十六歳の時だ。わたしはあの頃の記憶が欠落している。思い出そうとしても、頭に靄がかかって思い出せない……。
――婚約者がいた?
……わたしは二十三歳まで婚姻話はなかったはず。そう思うのに、いくら
(怖い……でも)
知りたい。知りたくない。会いたい。会えない。どうして。誰に。
胸が苦しい。ときどき見る夢の中のひと。どうして、わたしは何も思い出せないのだろう……。ひとかけらでもいい、思い出したい。この先もずっと分からないのだろうか――。ふいに絶望に似た感情が襲う。ぽたり。悲しくないのに涙があふれ頬を伝った。
「凛風、どうしたんだ⁉ なぜ泣いている――。そうか、余が辛いことを思い出させてしまったのか?」
憂炎は心配そうに顔を見る。
「い、いいえ! なんでもありません」
(儀式途中で、しかも皇帝陛下の前で泣くなんて。しっかりしなくちゃ)
涙をこらえ、儀式が終わると、数十人いる巫女や呪術師が順番に、二人の前にお祝いの挨拶に来た。
知り合いなのか、憂炎が一人の男を紹介した。
「凛風、こちらは
「……」
カツン、カツンと靴音にゾワリとして鳥肌が立った。顔を見ると、右目は髪で隠れている。髪は後ろにひとつに束ね、背が高くて白い肌、美麗な顔立ち。中世的で独特な雰囲気の男だった。
「お初お目にかかります――凛風妃殿下。呪術師の
「……はい」
(なぜだろう。初めての気がしない……わたしはあの呪術師を知っている?)
凛風の心がざわついた。
第一章 緋国に嫁入り 終わり
ここまでお読みいただきありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ🍀 コンテスト用に書いていましたが中途半端に終わってしまいました💦 まだ書いている途中です。
富士見L文庫の読者だったので記念にコンテスト参加うれしかったヾ(≧▽≦)ノ この中から受賞者でるのね。今から注目しなくちゃ。👀✨ 基本、和風&中華ファンタジーしか買わないけど、交流ある作家さんなら買うよ~(´艸`*)🏳🌈
また、富士見Lコン待っているわ~♡
焔と風の緋国後宮 ~忘却公主と記憶の封じ師のあやかし帖~ 青木桃子 @etsuko15
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