ファンタジーですが、大正や昭和あたりの日本を感じます。
女は結婚し子供を育てることが義務であり、夢を追っても、風習に絡みとられた現実の前には萎れてしまう。
そんな息苦しい世界で、美和は聖獣である蒼翼の婚約者となります。
美和は幼さゆえに恋を知らず、蒼翼の想いに気づかないじれったさがなんともたまりません。
戦争が暗い影を落としますが、登場人物たちの一途さや不器用なほどの純情さが物語に美しい色を添えます。
人生とはこんなものだと諦めた大人とは違って、若い彼女たちは現実とうまく折り合いをつけながら、自分の幸せを見出していく。
明るさと爽やかさ。そして、恋したからこその優しさと強さを感じる物語です。
どこか昔の日本に似た、男尊女卑が色濃く残る世界。女子は15歳頃になれば皆、家族が決めた許嫁に嫁いでいきます。
主人公美和の婚約者は蒼翼。なんと彼は蒼龍です。
美和は治癒師を目指し、蒼翼は軍人に。離れていても二人は手紙を交わしながら心を通わせていきますが、彼らの国には戦禍が忍び寄ります……。
異世界が舞台であり聖獣がたくさん出てくるファンタジー小説なのですが、世界の根底にある価値観は日本人に馴染み深いものであり、すっと世界に入り込めました。
女性だというだけで生きづらい社会の中で、懸命に夢を追い、道を切り開こうとする姿に胸が熱くなるはずです。
一方で、男性も男性で、期待と圧力を受け、同様に生きづらそう。
まさにひと昔前の日本を彷彿とさせます。
そしてなにより、少しずつ絆を深めていく若い二人の始終初々しいこと!
また、友人や兄弟など、脇を固める人々もそれぞれに悩みを抱えていて、主人公含めみんなを応援したくなります。
ファンタジーなだけでなく、恋愛小説であり、人間ドラマでもあり、戦争ものでもある本作は、普段ファンタジーを読まない方にもおすすめしたい一作です!
十五歳になる女子には嫁ぎ先が決まっている「日ノ国」。
主人公の美和のお見合い相手は四つ上の蒼翼という男性でした。そのお見合い相手ですが、実は人間ではなく半獣――蒼龍なのです。
和風ファンタジーと異類婚姻譚、そして少女の恋。
魅力的な恋愛の物語の中には現実に近しい描写がたくさん入っています。
まず美和の暮らしている「日ノ国」という国では、男尊女卑が当たり前です。そして戦争。蒼翼は軍人であり、戦場にも駆り出されていきます。少し昔の日本のイメージに近く、生活様式なども戦前を思わせる描写がたくさんあります。注目していただきたいのが、そこで生きる女性たちの強さとうつくしさ。
まだ少女の美和でしたが、自身の夢に向かって前向きに生きる姿はとても魅力的でした。最初は婚約者の蒼翼との手紙のやり取りからはじまるのですが、その初々しさに思わず頬が緩みます。
蒼翼との交流を重ねるうちに、幼かった美和も少しずつ変わっていきます。
少女を突き動かすのは強い意志。恋と夢と、そのふたつを美和はけっして諦めません。
本編の後に外伝と続くのですが、こちらのおはなしも必見です。
ここでの主人公は美和の友人琴子。本編ではあまり語られなかった琴子ですが、彼女もまた恋をします。その姿はやはりうつくしく、そして「日ノ国」で生きる女性の強さがしっかりと描かれています。
恋愛と和風ファンタジー。ぜひ外伝の最後まで読み終えていただきたい作品です。
ジャンルが「恋愛」であるようにかわいらしい恋物語の一面がありつつも、
どこか昔の日本を思わせる「日ノ国」に、聖獣など人ではない存在が垣間見える世界、そして背景には戦争の兆しもあり…
そんな独自の作り込まれた世界観は、本格的なファンタジー作品としても、とても読み応えがありました!
そしてその世界で暮らす人々の様子がとても臨場感溢れていて…
登場人物それぞれの悩みなどが手に取るように感じられ、毎話のように感情が揺さぶられます。
(特に女性読者の方は、自分事のように感じる部分が多いかと思います!)
和風の物語にそれほど馴染みのない私でも、最後まで面白く読ませていただきました。
(もちろん和風な世界観が好きだったり、龍や麒麟などの神獣に興味のある方はさらに楽しめる作品だと思います!)オススメです!