幸せなひとときに溶けていたい

主人公の小西 紫ことコニーは、ひょんなことからキンキンに冷えた大量の卵白を頭から被ってしまう衝撃の冒頭。
現世での受難記憶を優しく溶かしていくように、転移先の異世界でモデル並の美男子ふたりと運命的な出会いを果たします。
内に秘めた心で目の保養としつつ、小さな幸せを感じながら穏やかな時は流れて……

ショートケーキのホイップクリームに隠れたイチゴのように、小っ恥ずかしいネイキッド場面も、どこか爽やかに甘く通り過ぎるテイストに好感が持てます。

甘酸っぱくも、どこかほろ苦い恋の行方は、オレンジガナッシュの優しい口溶けに似ているかのよう。

お菓子作りで定番の始めのヌルヌル卵白は、後のお菓子のためのタネを思わせます。

それを可能とする外側のサクサクとした食感としての文体は軽やか読み進められ――その内側へとゆっくりと展開されるにつれ、なめらかでしっとりとした柔らかい口当たりに。

そして秘められた隠し味もストーリーに華やかな彩りを添えて。

バラエティ豊かな味覚を楽しめるように仕立て上げられた、作者様の本作への丹精込めた真心を感じます。

飯テロ要素もなんのその――気づけばどっぷりハマっている、甘美でハートフルなトキメキに憩う、心もお腹も満たされるグルメファンタジーです。

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