春崎

@writer0023

第1話 ようこそ、春崎へ

「一度入ると出られない町」「世界から切り離された町」「汚れた町」

これは、春崎という、とある小さな町につけられた異名だ。

春崎は、10年前に起きた人災及び失踪事件をきっかけに、世間から切り離されてしまった。まだ高校生だった少女が、町の発電所に爆弾をしかけ、人体に有害な物質を含む水蒸気を、町に散布させたのだ。そして、その少女は爆発事件を起こす数日前に、クラスメイトを誘拐、一人暮らしをしていた自宅に監禁していたのだ。クラスメイトは少女の友人で、二人は仲が良かったのだという。その子は有毒ガスにより死亡、

犯人の少女は発電所の爆発で自殺するという、

そんなショッキングな事件は、日本中で報道され、次第に「春崎へ行くと完治しない病にかかる」「春崎の住人は、有害物質を体内に持つ危険実物だ」「だから、春崎へは行くな、春崎の人間と関わるな」と、根拠のない噂が広まっていった。

人々は、相手が春崎の住人だと分かると容赦なく非難し、春崎の人々は春崎を出ることを恐れた。

こうして、春崎は少しずつ世間から切り離されてしまい、現在では春崎で不自由なく暮らしていけるために、大型ショッピングモールや水族館が完成した。つまり、春崎の住人は、特定の娯楽を除けば、安定した暮らしをすることができるのだ。

子どもたちは、春崎を出なくても教育を受けられるように、小中高大一貫の国立学校が設立された。

これが、大まかな春崎の歴史だ。


私がこれから住む町「春崎」は、どうやらとても閉鎖的な空間らしい。でも、ここで何十年も生きている人がたくさんいる。だから大丈夫。きっと、東京よりは住みやすいはずだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

春崎 @writer0023

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ