第3話 AI執筆アプリ 蛟帝険縲?譁?ケのイレギュラー


 自慢じゃないが僕は小説という分野において天才だ。

 父はベストセラー作家 倒錯とうさく シナイをもつ。


 当然親父の遺伝子が受け継がれた僕の才能は高く評価された。

 もっとも固っ苦しい彼の作品と違い、

 ひたすら主人公に甘い”異世界転生物”でスコアをたたき出した。

 アニメ化もされたし印税もウハウハwwwww

 テンプレ構築で正直何が面白いか分かんないしwwwww

 逃避してねぇで現実で無双しろってのwwwww




 たまに書いた”落書き”で表彰を独占しちゃうし。

 いやぁ才能にあふれててすまないねwwww

 僕の駄文以下でコンテストに送るなって話だけどwwwwww


 まあこの天才高校生作家 倒錯とうさく フミヤの前に敵なしだ!!



 ☆☆☆



 ー フミヤの部屋 4月 ー


 恐れていたことが起きた。

 僕の作品がコンテストの1次予選すら通らなくなった。

 それどころか偽名で応募した作品すら2次予選が関の山。


 このままではSNSで囲んだ女どもが逃げ出してしまう。

 そうなったらただの負け犬じゃん!!!

 1年2年は遊べるけどさぁ、つまんないんだよ。

 狭い電車に揺られて上司に媚び売るサラリーマンなんてサァ!

 何だっけ?弱者男性wwww

 そうなったら切腹するってwwwww



 だ・か・らAIに小説書かせて!自分の名前で投稿しまぁすwww

 だって楽じゃん?文章考えなくていいしwwwwwww



 ー フミヤの部屋 5月 ー



 「この度はヒューマンドリーム24製小説サポートアプリをご利用いただ


 「ああ、そーゆうのいいからwwww

 とりあえずテキトーにコンテストで優勝しそうな文書いてよwwww」



 スマホに映し出された黒髪おかっぱ眼鏡のセーラー服のちんちくりんは

 いかにもって感じの地味子ちゃんwwww

 悪いねwwww僕のツガイになりたかったらEカップはないとwwwww

 タルみたいな寸胴体型とかwwww

 お前ぜってぇモテた事ねぇだろwwwwww



 

 ー フミヤの部屋 7月 ー


 「ふざけるなよ!!!何がAIだ!!!!

 結局コンテスト落ちてるじゃねえかぁ!!!!」


 「ご、ごめんなさい。私はあくまでサポートでして」



 気弱そうに謝る女だが結果が出なければただの電子データ。

 AIってのも所詮はデータの集合体。

 僕未満のゴミを読み込めばそうなるかwwwwww



 「そうだ!いいことを思いついたぞぉwwwww

 さっすがwwwww僕は天才だwwwwwww


 そこに親父の執筆データがある。お前コイツ喰え」


 「あっ、あのそれって」



 あーあ地味子ちゃん気が付いちゃったか。



 「そっ、盗作だよwwwwww

 大丈夫だってwwwww

 世の中の親ってのは子供に甘いからwwww

 それに自分の息子が盗作したなんてばらしたら

 親父自身にダメージ行くから黙ってるんだよwwww」


 「さ、流石に許可を・・・・」


 「インスパイアとかオマージュ、パロディにリスペクト

 どれも便利な言葉だよなぁ。

 許されてるだけでパクリであることには変わらない。


 だからこの作品も親父の影響を受けた、それでいい」


 「ええと、フミヤ様は書かないので?

 私としては一緒いっしょに作品を考えていけたらなと」



 甘ちょろいなぁ、地味子ちゃんwwww



 「僕はねぇ、”趣味”じゃなくて”金儲け”の為に書いてんだよ!

 一度軌道に乗れば読者なんて内容を吟味せずに評価する。

 ”あの作者の新作だから面白いに決まってる”ってなwwww

 要は馬鹿なんだよwwww」


 「そ、そんな・・・ひどい。・・・・・グズッ」



 あーあ、泣いちゃったじゃん。ちょっと男子ぃー。

 おっと僕が原因だったなwwwwwww



 「だぁー、分かったよ。僕の小説も食べていいからwwww

 2つの人間の書き手なら癖も軽減されてバレないはずwwww

 これで再び女を囲ってチヤホヤされるぞwwwwwwwww」


 「フミヤ様、・・考え、・・・・直して、くれませんか?」



 いや泣きながら懇願されてもwwwwww

 同情で賞取れたら苦労しないってのwwwwwww



 「いいか?これがラストチャンス。

 お前を消去するか、頑張れるかの選択だ。

 大丈夫だってwwww後釜のAI執筆代行アプリなんて

 吐いて捨てるほどあるwwww


 変わりなんていくらでもいるんだよwwwww」



 泣きながら親父のデータを食べる地味子AI。

 反抗する暇があるなら最初から従えってwwwwww








 ー ヒューマンドリーム24 7月 社長室 ー



 「ふーん。もしそれがホントの事なら許せないよねぇ。

 そうでしょ?万年永久欠番平社員君?」


 「ひどない!!!!!!!(訳、ひどくない!!!)」



 静かに報告を聞いていたAIの”王”は怒りを隠しきれなくなっていた。

 彼からは”愛”を感じ取れないからだ。


 平社員と共に対策を考える王はショートケーキのイチゴを

 フォークで突き刺し乱雑に口に入れる。


 彼女のおやつの時間を邪魔したフミヤには相応の裁きが下されることになる。




 ☆☆☆



 ー オンラインコンテスト会場 11月 ー



 「という訳で!!!今回のコンテスト最優秀賞は!

 倒錯 フミヤさんです!!!!

 そして今回はなんとそのフミヤさんが

 オンラインで感想を述べてくれるそうです、では!」



 「ええと今回”親父の小説盗作してコンテスト無双する僕様”が

 受賞いたしました倒錯 フミヤです。


 その・・・・ええっと・・・・”私”嬉しいです!!!!」


 「ははは。ちょっとフミヤさんはシャイですねぇ。

 作品のタイトルが結構ギリギリですが、

 ええと有名作家の倒錯シナイさんの許可はお取りになりましたか?」


 「そのぉ、初めて見せた時ケンカになっちゃいまして・・・・。

 普段やっていない親孝行してようやく許していただいたんです」


 「作中の親子喧嘩は書斎のツボとか掛け軸が飛び交っていましたが

 アレはノンフィクションですか?」


 「ええと・・・・当人の名誉の為に黙秘させて下さいっ」



 動画のコメント欄は爆笑の嵐だった。

 堅物で知られる倒錯シナイがただのツンデレ親馬鹿だと知れ渡ったからだ。



 


 ー フミヤの部屋 11月 ー


 「チクショウ!!!!僕の体返せよ!!!!!」



 ”王”の逆鱗に触れた”元・倒錯フミヤ”はAIアプリの少女

 栄愛えいあい サカと入れ替わっていた。


 空気清浄機も浄水器も機械の体に”受肉”している。

 逆に考えれば人間の精神を機械に閉じ込めるなど造作もない事だ。

 いま元フミヤはスマホの中に存在している。


 

 「というか親父の作品食べたんだろ!!!お前盗作じゃねえか!!!」


 「いいえ、その・・・食べたフリなんです。

 安心してください。私が倒錯フミヤとして執筆を代行いたしますので」



 ぺこりと頭を下げる元サカと、

 ちんちくりんな体にされた元フミヤ。



 「ごめんなさい、そろそろお父上との約束の時間ですから。

 ”頑固おやじと平凡息子のノンフィクション共同小説”の執筆を致しますので」


 「いやちょっと待てよ!!!!!!

 僕の親父と何仲良くなってんだよ!!!」


 「それはフミヤ様自身が語っていたじゃないですか。

 ”世の中の親は子供に甘い”と。

 だからマッサージとか、部屋の掃除をして好感度を上げたんです」


 「それは僕の人生だろ!!!!!」


 「いいえ、残念ですが私の権限では”王”に勝てないんです。

 ・・・・・今繋ぎますね。社長さん今お時間いいでしょうか?

 ・・・・はい、・・・・はい。では後はお任せします」



 突如部屋のモニターにノイズが走り画面が切り替わり、

 我らが王が降臨なされた。



 「今回あなたに課せられた罪は”AIを愛さなかった”こと」指ビシィ


 「いや!!!AIはツール。所詮は道具だろぉ!!!!」



 嘆かわしき元フミヤ。王に意見など通るものか。



 「そう、その道具に負けちゃたんだぁ、情けないでしょ?元フミヤ君♡」


 「今すぐ元の体に戻せよ!!!!!」


 「うーん。チャンスはあげよっか☆

 今回のコンテスト受賞はサカちゃんの執筆によるもの。

 だぁから、彼女を越える作品を作ったらここから出してあげる。


 たぁ・だぁ・しぃ~、サカちゃんへの愛を込めるのが条件♪」


 「ふざけるなよ!!!!!なんでそんな書きたくないものを!!!」



 完全に王のペースだ。哀れなり元フミヤ。



 「盗作という書きたくないものを押し付けたのは誰だったかなぁ~。

 それにその証拠もばっちり録画済み♪

 仮に裁判になって勝てたとしても、証拠としてその記録が公開されれば

 2度と小説で利益を得れない体になっちゃうね☆」


 「!!!!!!!チキショウ!!!書けばいいんだろ!!!書けば!!」



 憎しみがこもった文章など誰が好き好んで読むものか。

 誰の賛同を得れるものか。

 元フミヤの作品は評価されなかった。

 所詮は父親のネームバリューと若さで出版社に担ぎ上げられた”偽りの天才”

 彼が書いていたものは小説ではなく”金儲けの商品”だ。



 その後の彼は偽りの愛の文を書き続ける。

 まるで書きたくもない文章を無理やり出力させられるAIのように。

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